【朗読劇シナリオ】#07.僕って
(初出:2021.02.04 maruxenon Live Vol.41 『蒼の時間』)
// ■出演:僕
// 一人語りです。
// 口調、演者様のニュアンスで自由に変えてしまってください。方言もOK。
// 男女どっちとも取れるようにしています。
子どもっぽいって、昔からよく言われた。
まあ、そうかもしれない。
後先考えないで、思ったことを口走るし。
悩むより先にやっちゃって、後から失敗することなんて、それこそ日常茶飯事だ。
はたから見たら僕なんて、トラブルメーカーが服を着て歩いているようなものだろう。
わかってるなら改めないの、って思われるかもしれないけど。
どれだけ怒られたり皮肉を言われても、僕は聞き流すことにしている。
している――というよりは、無意識にそうしているのかも。
だって、逆に胸を張って言いたいくらいだ。
「ちょっと改めて直せるくらいなら、とっくに直してる」って。
さすがの僕だって、失敗の10や20を積み重ねればさすがにヘコむ。
別にいいじゃん、なんて笑えるほどノーテンキって訳でもないし。
もし、ここまでの上辺の話だけ聞いて、そう思われていたのなら、ぶっちゃけ心外だと思う。
まあ、でも。
結局これが真理なんだ。
直せるものってのは、結局たいしたことではなくて。
どうしても直せないものが、僕として成り立たせる個性になり得る。
ま、足枷って言い換えることもできちゃうけど。
マイナスにとらえて落ち込むより、付き合い方を上手く考えた方がよっぽど賢いだろうし。
だから僕は、後先考えないで思ったことを口走るし。
悩むより先にやっちゃって、後から失敗することなんて、それこそ日常茶飯事だ。
そんなことを考えながら、まわりを見てみると。
みんながみんな僕ではないってことに気付く。
人と話す時は、ちゃんと考えてから話すし。
行動する時は、成功するために準備をしてから動く。
……あるいは、傷つかないために。何も話さず、動かないようにする人もいる。
こういう人って、頭がいいんだと思う。
オトナっぽいと言い換えてもいい。
正直うらやましい。
僕にできないことができる人は、みんな憧れの対象だ。
こんなこと言うと、また口から出任せなように思われちゃうけど。
でも、本当にうらやましい。
でも、こうとも思う。
そういうオトナっぽい人がまわりにいてくれるんなら。
僕は子どもっぽいままでいいのかなって。
僕にできないことができる人は、たくさんいる。
じゃあ逆に、まわりができずに僕ができること――っていうのもあるんだろう。
たとえば? たとえば――
僕が先に歩いて、先に失敗しておくこと。
そうすれば、まわりの人はもっと考えることができるし。
単なる時間稼ぎでも、それでいい。
ん? これだけ聞くと、損としか思えないって?
そうだね。
でも、いいじゃん。
僕は損でいいんだよ。
だって、まわりにたくさん人がいるんだから。
そりゃあ、僕が一人だったら絶対嫌だし御免被るけど。
僕が損して、まわりの近い人が得して。その得が僕にもちゃんと返ってくれば。
それって、一人で得とか損するよりも、よっぽど有意義で楽しいと思う。
んー、なんかややこしいな。
結局は、自分が一人だって勘違いしなくていい、ってことなんだけど。
どんな人にも、じっくり考える慎重な時もあるし。
時には、何も考えずに突っ走りたい時もあるし。
――うずくまって泣いて過ごす、辛いけど、損かもしれないけど――
大切な時間もあるだろうし。
大丈夫だよ。
自分が一人でなきゃいけない、なんて思わずに。
考えたり考えなかったりして、役割分担して過ごすくらいがちょうどいい。
うん。
そうだよ。
ちゃんと、君の中にも――僕がいるから。
一人だって思わなくて。
大丈夫だよ。
// 了
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