ミハイル プレトニョフ【滲み技法と色の移ろい】
待ちに待った、プレトニョフのリサイタルに行ってきました。
場所は高崎芸術劇場。
当日、ギリギリまで予定のあった私。
演奏に間に合わないんじゃないかと道中ヒヤヒヤしましたが、何とか開演10分前に到着。
入口では、入場を待つ人の列がちょうどまばらになったところのようでした。
いざ、私の番。
チケットを受付の方に渡して、会場ロビーに足を踏み入れた時の、あの胸の高鳴り。もう、そこから私を別世界に連れて行ってくれます。
今回初めてプレトニョフの演奏を聴くので、席をどこにするか凄く迷いましたが、前から5列目のピアノど真ん中の席にしました。
が、結果は正解。演奏中「自分ナイス!」と何度思ったことか。
と言うのも、プレトニョフの美音。特に弱音の美しさを感じるには絶好の場所だったのです。
彼の弱音は、絵画で言う滲み技法のよう。
日本画では垂らし込みと言ったりしますが、水を張った紙や、まだ乾く前の絵の中に色を落として、その滲みで絵を描いていく方法です。
会場全体をキャンバスに、ホールへ漂う空気に音が滲んでいく。まさにそんな演奏。そして、近すぎず遠すぎない位置にご本人がいることで、音が鳴って浮かび上がるその瞬間もしっかり感じることができました。
音が滲んだ後、次の音へ移り変わっていくその様も息を飲むほど美しいです。
その魅力がぎゅっと詰まっているのが、3曲目に演奏された、ショパンの舟唄。
ショパンの舟唄は、プレトニョフが1番と思っている私。
素人なので、彼の曲の解釈やらはさっぱり分からないのですが…
今回、事前にチェックしていた、オールショパンプログラムに舟唄が載っていなかったので、残念に思っていましたが、当日いただいたパンフレットに「舟唄」と書いてあるのを見つけ、演奏前から1人でニヤニヤしていました。
そんな舟唄は、当然ですが普段聴いている録音以上に素晴らしく、音の滲みと移ろいが川の流れのよう。
まさに舟唄、タイトルそのものです。
ゴンドラに乗って、キラキラとした音の流れに身を任せているような、素敵な空間でした。
このプレトニョフの美音。
いったいどこまで滲み広がるのか…
余裕があれば、残りの公演全て行きたい!
けどそれは不可能なので、次に来日公演があった際は、もっと遠くから聴いてみようと思います。
最後に、私が演奏会で1番楽しみにしているアンコールを添えて。
退場後、会場出入口付近に置かれる、このアンコールの看板が大好きなんです。
レストランにある「本日のデザート」的な感覚で、何だかスィーツを堪能した気分になり、帰る時まで楽しめます。
そう言えば、ピアノリサイタルってレストランのコース料理みたいですよね。
前菜からメインまで順に進み、最後はアンコールのデザートで〆る。
私は大食漢なので、プレトニョフの公演1回では足りかった…
最後まで読んでいただきありがとうございます! いただいたサポートは夢を叶えるために使わせていただきます。