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夏に始まる恋は夏に終わるのか

「帰るの?泊っていけばいいじゃん」

何てことを言っているのだろう。何て露骨で、何て情けないことを。

プライドを捨てきれない私が関係性を定義できない相手にアルコールの力を借りてできるせめてもの引き止めだったが、叶うことはなく男は帰って行った。何となくこうなることは分かっていて、いい加減諦めたくて最初で最後の勝負として引き止めてみたのかもしれない。
この歳になると自分の中でいくつかの答えを用意していて「やっぱりそうだよね」とすんなり消化はできるが、それでも金曜の24時前にこのまま家に帰る気にもならずその足でいつもの飲み屋に向かった。こういう時に一人で飲める店を見つけておいて本当に良かったなと思うのだ。タクシーでほぼワンメーターの距離を移動し、店に入った。

決してかしこまった店ではないが薄暗く、パブと呼ぶのが近いだろうか、今となっては初めて来たときも一人だったというと驚かれるほどには入りづらい店ではある。細長い店内を進むとよく見る顔に声をかけられた。

「来ると思ってた」

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