グラクソ・スミスクライン(Glaxo Smithkline)2024年第3四半期の財務とパイプライン概要

はじめに

GSK(グラクソ・スミスクライン)は、感染症、免疫疾患、腫瘍、および呼吸器疾患などの分野で革新的な治療法を提供する製薬企業です。本記事では、2024年第3四半期の財務実績およびパイプラインの進捗を解説し、今後の成長見通しについての洞察を提供します。今回の報告では、スペシャリティ医薬品、HIV、およびワクチン領域における売上とパイプラインの主な進捗に焦点を当てています。

財務概要

2024年第3四半期、GSKは全体的に堅調な業績を示しました。
- 総収益:80億1,200万ポンド(前年同期比+2% CER)
- コア営業利益:27億6,100万ポンド(前年同期比+5% CER)
- 1株当たり利益 (EPS):コアEPSは49.7ペンス(前年同期比+5% CER)
- 2024年度ガイダンス:売上は7~9%、コア営業利益は11~13%、コアEPSは10~12%の増加を見込む。

セグメント別売上

1. HIV
- 総売上:17億5,000万ポンド(前年同期比+12% CER)、特にOral 2-Drug Regimens(Dovato、Juluca)および長期作用型製剤(Cabenuva、Apretude)が成長を牽引。
- Dovato:5億6,700万ポンド(前年同期比+23% CER)。GSKのHIV製品群の中で引き続き売上が最も高い製品となっています。
- Cabenuva:2億4,500万ポンド(+40% CER)、長期作用型治療の需要拡大が成長に貢献。
- Apretude:6,900万ポンド(前年同期比+95%)、HIV予防薬としての需要が顕著に増加。

2. スペシャリティ医薬品
呼吸器および免疫
- Nucala(喘息治療薬):4億4,400万ポンド(前年同期比+12% CER)。重症喘息患者に対する需要が引き続き高まっており、特にヨーロッパや国際市場での成長が顕著。
- Benlysta(全身性エリテマトーデス治療薬):3億8,900万ポンド(前年同期比+16% CER)。需要増と処方量の増加により成長。
腫瘍
- Jemperli(子宮内膜がん治療薬):1億3,000万ポンド(前年同期比+>100%)。適応拡大による新規患者の増加が売上増に貢献。
- Ojjaara(骨髄線維症治療薬):9,800万ポンド(前年同期比+>100%)。米国での速やかなローンチが成功し、強い需要を獲得。
- Zejula(卵巣がん治療薬):1億4,400万ポンド(前年同期比+6%)。米国における価格効果と、米国外での需要増加が寄与。

3. ワクチン
- Shingrix(帯状疱疹ワクチン):7億3,900万ポンド(前年同期比-7%)。米国での需要減少が影響する一方、オーストラリアや中国の国際市場での導入による成長も見られます。
- Arexvy(RSVワクチン):1億8,800万ポンド(前年同期比-72%)。米国市場でのガイドライン変更やCOVID-19ワクチンの優先化が影響。
- 髄膜炎ワクチン:5億2,000万ポンド(前年同期比+22%)、特にBexseroが米国のCDC購入パターンやドイツでの推奨による需要増加で成長を牽引。

パイプラインの進捗

1. 感染症
- Arexvy:50〜59歳向けの適応拡大がEUで承認され、持続的な保護データも追加。
- gepotidacin:単純性尿路感染症治療薬として米国での優先審査申請が進行中で、2025年の承認を目指しています。

2. HIV
- Apretude:HIV予防の長期作用型治療としての実地データが99%の有効性を示し、さらなる成長が見込まれます。

3. 呼吸器および免疫
- Nucala:COPD(慢性閉塞性肺疾患)の新たな適応症を日本で承認取得し、米国でも申請準備中。
- depemokimab:重症喘息およびCRSwNP(鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎)の治療薬としてフェーズ3試験で好結果を取得し、年内の承認申請を予定。

4. 腫瘍
- Jemperli:米国で子宮内膜がんに対する新たな適応症を取得し、さらなる売上拡大を目指す。
- Blenrep:多発性骨髄腫治療薬として米国、日本およびEUでの承認申請中。

業績と展望

GSKは2024年通年で売上成長を7~9%、コア営業利益の成長を11~13%、コアEPSの成長を10~12%と予測しています。特にHIV治療薬や腫瘍製品の売上が好調で、ワクチン分野の一部減少を補っています。また、ArexvyやNucalaの適応拡大も期待され、今後の成長が見込まれています。

結論と今後の展望

2024年第3四半期において、GSKはスペシャリティ医薬品と腫瘍領域の売上増加、そして堅調なパイプライン進展により、強い業績を示しました。腫瘍治療薬や呼吸器疾患治療薬の市場拡大が続く中、同社は今後も長期的な株主価値向上に注力しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?