0731 夏

日課の通話をしながら、最小音量+字幕で見ていた。「ただ側に居ただけの他人なんて、弱いもんですよ」みたいなくだりに抉られすぎて、ちゃんと見返さなきゃないな〜と。その流れでようやく母へ報告をしようと思いたって、いくつか言葉を選んでラインを送った。胃がスピリッツをカッと飲んだ時みたいに熱くなってストレスを感じていたのを他所に、滅多に見ない絵文字付きの文章が返ってきてあっけらかんとした。


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自分の中で一つ大きなことに片がついたという言い訳にして、週後半しかオープンしていない大好きな菓子屋へ向かう。狙っていたミルクレープもシュークリームもショーケースには並んでいなくて、以前より幾ばくか高価になった最後の一つのショートケーキを注文した。「シュークリームって、何時に来たら買えますか」と聞けば予約や取置きをしてくれるということも判明。ああ、くやしい。「プリンならご用意できますよ」と言われてくやしいからプリンも買った。

くやしい、けれど、うれしい。小雨降る街中をサクサク歩きながら次の予定へ向かう道中、先輩からのラインで今日本当は仙台で試食会の用事があったことを思い出す。すっっっっかり忘れていた。背中に冷や汗が伝って、急いで電話をかけて謝罪する。そもそもの集合時間から15分も過ぎていた。せめて開始前に欠席を伝えるべきだったのに、申し訳ないことをしてしまったとまた凹む。


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重い足取りでスーパーにも立ち寄る。
これは、今日は、仕事を終えたら黙々と何かを作らなければ。

母は昔から、嫌なことがあったり、何か調子が良くない時に手の込んだ料理を作る人だ。私と同じくらいの歳の時は、父と大喧嘩をして、その次の日に大量に手ごねパンを作っていた。餃子の時もあったし、フキの時もあった。私は手の込んだ料理を作るのがもっぱら苦手で、量に走ってしまうところがある。今日は肉じゃが。卵を買うから、ふわふわの甘い卵焼きも作りたい。


昨日より卵が50円も安かった。ミックスサイズだけれどうれしい。お肉売り場で全く用事がなかった手羽元がとってもお値引きされていてついついカゴに入れてしまった。今日は肉じゃが。けれど作り置きで手羽元を煮よう。卵焼きをやめて、ゆで卵にしよう。ゆで卵を作るなら、一緒に茶碗蒸しもできちゃうな。今日は肉じゃが。卵とケーキを持っている私は、誰にもぶつかるわけにいかないし、早く帰らなければいけない。

倒れないようにケーキを持ち運ぶとき人間はわずかに天使

岡本大嗣/食器と食パンとペン

今、わたし、ちょっとだけ天使。

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