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4文小説 Vol.30

目を閉じて、手を合わせて、お経を唱えて、19年と半年にわたり続けてきたその時間に、何かしらの意味や価値はあるのだろうか。

今日の須磨寺は薄曇り、四季の移ろいを教えてくれる境内には淡い紫色の花が点在していて、名をアガパンサスというらしい。

情報セキュリティマネジメントを学べ、TOEICで800点以上を取れ、常に意味を求め絶えず価値を高めることが要請される世の中で、私は応えられるものを持ち合わせていない。

目を閉じて、手を合わせて、お経を唱えて、月に一度くらいは世の中の評価や尺度から解き放たれ、意味や価値より大切なものを噛み締めたいのだ。

―亡父の月命日


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