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密かな願い 第3のリベロ Vol.12

関東大学ラグビー対抗戦の最終節で組まれたのは、伝統の早明戦。同じ日の同じ時間帯に開催されたのが、アメフトの全日本大学選手権・甲子園ボウルの西日本代表決定戦、関学と立命館のライバル決戦だった。NHK総合で放送された早明戦に対し、Eテレのアメフトはサブチャンネルでハンドボールが中継されたため、粗悪な画質。両者の知名度やステイタスの差が、浮き彫りになったようだった。

首都圏への一極集中は財界に限った傾向ではなく、ラグビーや駅伝をはじめ大学スポーツが概して「東高西低」の構図にあるなか、アメフトは西日本が優位に立つ数少ない競技だ。近年の関西で常に覇権を競ってきたのが関学と立命館で、対戦成績でははかりきれない両校の激闘は、甲子園ボウルをも凌ぐ事実上の学生日本一決定戦と呼んでも差し支えない。母国アメリカでは国民的存在でも、わが国ではマイナースポーツの域を出ないアメフトの現実が惜しまれる。

幾度も熱戦が展開されてきたなかでも、秀逸だったのが昨シーズンのゲームだ。立命館に2本のタッチダウンでリードされた関学は、ラスト3秒で得たフィールドゴールを成功。5季連続の甲子園ボウル出場を決める16-14の劇的な逆転勝利だった。LB飯田に何度も突破を阻まれるなど立命館の強固な守りに手を焼き、関学のTDは前半の1本に抑えられた。終盤の第4Qも強力RB立川を軸とした立命館の徹底したラン攻撃に押し込まれた関学だが、決まればとどめを刺されていたであろうTDパスを、DB竹原がインターセプト。まさに起死回生のビッグプレーとなった。「サヨナラFG」による決着は2018年の再現でもあったが、その時もトライフォーポイントの1点が最後に勝敗を分けていて、やはり名勝負のあやは細部に宿るのだろう。

2組に分けて開催された今シーズンの関西学生リーグも、優勝決定戦で相まみえたのはB組1位の関学とA組1位の立命館だった。前半、ランが封じられた関学はパスに活路を見出す。第2Qには2年生RB前島が意表を突くTDパス、WRとの兼任にとどまらない多才を見せつけ、14-11の接戦で折り返した。後半、関学は第3Qに一時逆転を許すもTDを連取して28-18。関学が勝負を決めたかに思えたが、立命館は残り2分21秒で3点差まで追い上げ、敗れてなお強しの印象を与えた。

3週間を経て、再び両雄が顔を合わせたのが冒頭の西日本代表決定戦。前半、関学は立ち上がりのTD2本でほぼ2ポゼッション差をつける。今回ばかりは関学の完勝かと見えたのも束の間、後半に入ると第3Qの6分あまりで4つのTDが飛び交う怒涛の展開。第4Q残り5分強、立命館のQB野澤が痛恨のファンブルを犯すまで目まぐるしい攻防が繰り広げられた。一方、ラグビーの早明戦は、互いに1トライを取り合い3点差の接戦で前半を折り返したものの、後半は長く膠着した。異なる競技を比較する野暮は承知しつつ、両ゲームの内容には画質ほどの差は無かったと思う。関学と立命館のライバル関係。それが早明戦や野球の早慶戦に勝るとも劣らない「名勝負数え歌」であることを、少しでも多くの人に知ってもらいたい。いまは変換もできないが、いつか「関立戦」という代名詞が浸透し、わが国のアメフトの象徴になってもらえないものだろうか。


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