見出し画像

4文小説 Vol.38

いまだ母の手づくり弁当を食べているだけで気恥ずかしいところ、その日はいつにも増して人目が気になる内容だった。

還暦目前のお別れから20年が過ぎて、生きていれば傘寿の節目。

帰宅後、霊前に供されているのを見て、尾崎豊が「Forget me not」で唄ったのは薄紫の小さな花だと知った。

鯛と赤飯に、祀られている仏壇と同じ名の忘れな草、母にとって父はいまも亡き人ではない。

―亡父・生誕80年


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?