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品番のない香水

明け方の雨で色が濃くなった道路。あおいろの熱を帯びた髪。西瓜を頬張って腫れたくちびる。私にしか、できっこない、なんてことはないんだけれどね。慌ててカメラを構えるも、天使たちは姿を消した。ぎこちなく抱きしめられるのにもすっかり慣れて。今日もどこかで孤独が死んだ。日記以外は、全部見ていいよ。どうせ何にもわかんないからさ。

わたしという生き物は、布団の上でも、電車の中でも、等しく涙が流れるタイプ。特別我慢しようともしないせいもあるけれど、涙がぽろぽろと頬を転がるのは日常茶飯事。そっとハンカチや指先で拭えば、静かに、何事もなかったように生活を送れるタイプ。

涙とは、私たちが、心の動きに素直にならざるを得ない、抵抗も虚しく、その瞬間に落ちる、あたたかい透明の液体。内側から生まれる、目に見える形を纏った、わたしの声みたいなもの。だから、抵抗するのも虚しいので、手放しに泣いている自分を抱きしめるしかない。

一方で、そう簡単には泣けない人もある。自分の感情を認めるのが怖いとか、感情に支配されるのは非効率であるとか、自分よりも大切にしたい何かがあるとか、そもそも泣き方を忘れてしまったとか。泣きたくても泣けないのか、泣きたくないから泣かないのか、細かくそれぞれを語りつくすことはできないけれど、結果として、涙が落ちる人と、落ちない人とが、いるのだろう。

きっと、想像の範囲を超えるところに、あなたなりの正しさがあるので、どちらが良いとか悪いとか強いとか弱いとか、そういうナンセンスな話はしたくない。と考えていたし、現在進行形で考えている。けれど、明らかな違いがある故に、交わることのできない(敢えて断言する)境界線があることを、わたしは知っている。と、静かに悲しく笑う準備はできていたのに。

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