普通の子

「勉強なんてできなくていいから、普通のことができる子になりなさい」
私はそう言って育てられました。

一見、要求が低いように聞こえるこの言葉。
でも私は、何をやっても褒められた記憶がないんです。

勉強はよくできたんだけど、勉強ができたからって、褒められることも喜ばれることもない。そんなことできなくていいから、普通のことができる子になってって言われるだけ。

普通ってなに？
それは、一人で時間になったら起きて、文句言わずに学校に行って、整理整頓して、忘れ物しないで、好き嫌いを言わずにご飯を食べて、お手伝いをして、夜更かしせずに寝て、兄弟仲良くして、叱られるようなことをしない子、なのかもしれない。

もっと違うことなのかもしれない。
シチュエーションが変わって、親の気分が変われば、全く違うことが普通になる。

結局、親の都合がいい子が欲しかっただけ。
私らしさは一つも見てもらえず、私らしさを認めてもらえることは一切なく、何をやってもどこかに足りない点を見つけられて、普通の子ができることができてない、って言われるだけ。

そんな子ども時代を過ごした私。

やっと今になって、私が異常に人の言動を気にして傷つくこと、小さなことをくよくよ長時間心配すること、大丈夫だと言う確信がないと新しいことがなかなかできないことなど、自分の中に恐怖や不安がたくさんあったと言うことに気がつきました。
今まで抑圧しまくってたから、不安があったことすら気づかなかったけど。

自分の本当の気持ちをなかなか表現できないでいたこと。
と言うよりも、自分の気持ちに気づきさえせずに生きてきたこと。こんな子ども時代を送ったら、それも当たり前。

どこかの誰かが決めた、基準すらなくてコロコロ変わる「普通」に合わせて行動できないからって、常に叱られたり批判されたり、陰で親戚に愚痴られたりするのだから。
不安で怖くてたまらなくたって当たり前。

何よりも、自分が自分であることを褒めてもらえなかったこと、喜んでもらえなかったこと、常に何者かと比較されて、失望ばかりされているように感じていたこと。それにどれだけ傷ついてきたことか。

私のインナーチャイルドに、たくさん謝りました。

たくさんの可能性があるのに、たくさんの興味があるのに、たくさんの優しさがあるのに、一つもそんな自分らしさに気づいてもらえることも、褒めてもらえることもなく、一人寂しく傷ついて生きてきたこの子。
彼女が、いつかまた微笑みを取り戻す日が来ますように。