お魚さん

朝。
水色の光が私を包む。
ベッドに深く沈んでいる。
雨がぴちゃぴちゃと落ちている。
籠った音に体が揺れる。
プールの底を泳いでいるみたい。
気持ちいい。
このまま息を止めていたらどうなるかな。
ぷかぷか浮かんでいって
ぷはぁ って上手に息継ぎ出来てしまうかな。
あーあ、やだな。

あの頃、水は青いと思ってた。
手で掬うと透明になって、私の肌色だけ。
丸い泡が頬を転がって消えていく。
鋭く差し込む光は水面で揺れて網になる。
今だけなら
捕まえてくれてもいいのに。

薄暗いぬるいお風呂が好き。
私がぼやけて見えるから。
からだの線をなぞって確かめなくても
一緒になれるくらいの温度の世界で、
ゆらゆらと泳いでいたい。
見て見て、私綺麗?

綺麗って言って欲しい。
こちらに入り込んでこない感じが心地良い。
水族館の水槽で泳ぐ魚みたいに
私を遠くから見つめていればいい。
もっと見たくて近くに来て
アクリル越しに触ってみればいい。
綺麗だなって他人事みたいにしてればいい。
私だって分かっても気づかないフリをしていて。

もう光が透明になっちゃった。
私がすくったからだよ。

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