編(あむ)

絵と文をかいています。草花や四季を背景に生活と不思議な世界を描いていきたい。泉かおる …

編(あむ)

絵と文をかいています。草花や四季を背景に生活と不思議な世界を描いていきたい。泉かおる https://note.com/kunpu8 というアカウントから引っ越してきました。

最近の記事

手編みのマフラーみたいに自分の描いた物が誰かを温めて生活の中で使われてたら良いな、それに糸を編む工程は絵を描いたり文を書くのに似ている と言う事で、名前を「編(あむ)」にします 意外と「あむ」という名前の方が多くいらっしゃったので少し変えて漢字にしました

    • 【小説】正子と傷だらけの幽霊(7)

       これからヤチルとハルが来る。正子を迎えに。  約束の時間が近づいてきた。夕方といってもまだ明るく、草むらの虫も夏を楽しんでいるように賑やかだ。田んぼの蛙もだんだん声を大きくしてきた。 「よし、これで全部入れたかな」  修学旅行の時に買った大きなリュックにお泊まりの荷物を詰め込んだ。 「正子ー! ヤチルちゃんとハルちゃんがきたわよー」  母の美知子が正子を呼んだ。 「はーい」  出て行く前に鏡で自分をチェックする。買ったばかりの白のチュニックと水色のGパン、それと髪型。  

      • 【小説】正子と傷だらけの幽霊(6)

         正子は、机が隠された次の日から学校に行っていない。  体調が良くないと言って学校を休んだ。別に仮病を使ったわけじゃない。本当に頭も身体も重たいし、ベッドから起き上がるのが辛いのだ。でも、ものすごく悪いことをしているように思えた。  次の日も行ける気がしなかった。また次の日も、そのまた次の日も。  そうして一週間くらいたった朝、母の美知子が部屋に入って来て、布団にうずくまる正子を見下ろして言った。 「正子、今日は学校どうするの?」  布団から顔を出すと、美知子が不安そうな

        • 【小説】正子と傷だらけの幽霊(5)

           正蓮教の会合の帰り、未来ちゃんの車の中で、泣きながら学校のことを話した。 「そんなことがあったんだね、辛かったね正子ちゃん」  未来ちゃんも涙声だ。 「ずっと私が悪かったのかなって思ってて、でも本当にそうなのかな?」  泣きながら、ヤチルとハルのことを思い出した。 「正子ちゃんは悪くないよ。大丈夫、大河先生のご指導通り、お祈りを続けて行けば、いつか必ず報われるよ。  私もね、すごく苦手な人がいるの。だけど、毎日その人のことを祈ってるよ。その人と会った時には、勇気を出してご指

        手編みのマフラーみたいに自分の描いた物が誰かを温めて生活の中で使われてたら良いな、それに糸を編む工程は絵を描いたり文を書くのに似ている と言う事で、名前を「編(あむ)」にします 意外と「あむ」という名前の方が多くいらっしゃったので少し変えて漢字にしました

          【小説】正子と傷だらけの幽霊(4)

           教室までの廊下を歩いていくと、他の生徒たちがこちらを物珍しそうに見ている。恥ずかしくて顔が熱くなってきた。  これまで正子のことなんて見向きもしなかったのに、何でこんなことになっているのかというと、正子の両脇にヤチルとハルがいるからだ。  美少女のヤチルが微笑めば、男子も女子もみんな頬を赤らめて見惚れてしまい、ハルがその鋭い眼光で睨めば、荒っぽい生徒も震え上がった。 (なんでこんなことになったんだ……)  ただ、普通の友達が欲しくて、誰からも無視されなければ、それで良かった

          【小説】正子と傷だらけの幽霊(4)

          【小説】正子と傷だらけの幽霊(3)

           目覚まし時計が鳴ってから、しばらく布団の中にいた。ここにずっと居られたらいいのに。  朝ごはんは食べたくないけど、せっかく作ってくれたから口の中に押し込んだ。制服もなんだか重い。  今日のお祈りは、いつもより遅く起きたからあまり出来なかった。  朝の道、川の音が響いてる。  いつもの鳥居の前で立ち止まる。鳥のさえずりが聞こえて、神社には木漏れ日が揺れていた。  学校行かなきゃ。  学校の昇降口に着いた。胸がぎゅうっとして、頭が何かで絞められているみたいに感じる。身体もだ

          【小説】正子と傷だらけの幽霊(3)

          【小説】正子と傷だらけの幽霊(2)

           ぼんやり暗い狭い空間、お尻からひんやりした感覚がする。どこだっけ、そうだ、トイレに座ってるんだった。いつも昼ご飯を食べている中学校の五階のトイレ。  頭がぼーっとする。ロックを外して個室から出た。  トイレサンダルを脱いで上靴に履き替えようと思ったら上靴がない。誰か持っていってしまったのだろうか。仕方ないからフカフカのカーペットをそのまま歩いた。  手洗い場には、陶器の可愛らしい女の子の人形が置いてある。 「あ、正子ちゃん、こんにちは」  明るく声をかけてくれたのは、正蓮教

          【小説】正子と傷だらけの幽霊(2)

          【小説】正子と傷だらけの幽霊(1)

           鳥居の中から吹く風がふわりと頬を撫でていった。神社の縁は明るく、参道には春の木漏れ日が柔らかく落ちている。  もし、今日学校に行かなくて、ここに隠れていたら誰にも見つからないかもしれない。でも、そんなことしたらダメだ、神社に行くと良くないことが起きる。  そんな葛藤をしながら、今日も正子は神社の前を通り過ぎて学校へ向かった。  正子の家は正蓮教という宗教をやっている。地域のお寺や神社も含め、他の宗教は悪い宗教だと教えられていた。同じ正蓮教の家の子が、地域のお祭りに出たら蜂

          【小説】正子と傷だらけの幽霊(1)