第1回 なぜ、政策立案プロジェクトか
はじめに:求められる地域の政策形成人材
(1)政策形成の現状
現在、政策が執行されたにもかかわらず、問題が解決されない事例が多く報告されています。その背景には立案された “政策の質”が不十分なまま執行が始まっていると指摘されています。これは「政策立案上の問題」です。その一方で、成果が出ていないにもかかわらず、政策が継続されていることも見られます。これは実施後の評価が形式的であるために政策の見直しが適切に行われていない「政策評価上の問題」です。
(2)地域課題としての政策形成人材の育成
地方分権化は地域間格差を生むリスクがあると言われています。その地域間格差に影響を与える大きな要因として‘人材’が挙げられています。地域の課題に対して、その地域の内外環境に適した「答えを創り出していく」には、従来の手続きを重視する取り組みでは限界があります。新たな環境に対応し、着実に地域 の問題を解決できる人材に求められる発想と能力を開発する必要 があります。なお、どの組織にも“成果(アウトカム)重視”による活動で 成果を生み出してきた人材がいますが、限られた人材であることから多くの担当者が‘アウトカム重視の政策形成人材’として活動できる動機づけと能力強化が求められます。
(3)現場で活かせるひとり一人の能力開発
政策を評価する制度を導入し、運用していてもスクラップ&ビルドを推進する部門を設置しても、成果がでない政策が継続されている組織があります。このような「アウトプット型組織」は、「アウトカム重視」 に向けて導入した評価制度や設置した担当部門があっても、それを形式化させている原因を明らかにすることからはじめなければなりません。その中には現状のアウトプット重視による組織風土・制度運用を変えることに抵抗感を持つ層が組織内に多いことが挙げられています。こうした実態を繰り返している組織は自覚することが必要です。
このような組織は、組織変革よりも将来に向けて現場の一人ひとりの政策担当者がアウトカム重視の発想を持ち、行動できる人材を育成する選択肢を検討すべきです。アウトカムを重視する政策形成の重要性を理解し、その進め方を現場で実現できる人材を育成していくことです。
本稿は以下の内容を掲載していく予定です。
1.なぜ、政策立案プロジェクトか
2.政策立案プロジェクトの目標(めざす姿)と重視すること
3.政策立案プロジェクトを通じて開発する6つのスキル
4.政策立案プロジェクトの事例
5.政策立案プロジェクトから学び、活かしたいこと
1.なぜ、政策立案プロジェクトか?
(1)プログジェクト型人材開発プログラムのねらい
地域で政策形成を担う人材の多くは、地域の問題解決の進め方の学習や実際の経験が少なく、かつ、固定観念、前例踏襲型発想、過去の経験を重視する傾向があることから講義、ケーススタディだけでは、自己流、場当たり的に進めてしまい、アウトカムの実現ではなく、アウトプット止まりになってしまうリスクがあります。
一方、プロジェクト型人材育成プログラムである「政策立案プロジェクト」は、人材育成を目的に一定期間、職場で発生しているテーマ(例:地域・事業上の問題)について、個人またはチームで問題解決活動の実践を行うものです。
政策形成のプロセスにおいて参画メンバー自身が主体的に考え、活動した結果を表現することを重視します。ただし、上記のように自己流・場当たり的になり、本来の目的に適した能力開発につながらないリスクがあります。そこで講師・事務局が参画者の活動を適切にサポートし、ズレた方向性の軌道修正を図ります。サポートは指導ではなく、あくまでも参画メンバーの自身でズレに気づき、自ら修正することを支援することです。
このラインより上のエリアが無料で表示されます。
(2)実践で活用できる能力開発をめざす
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