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ムダを”減らし、防ぐ業務改


前編:ムダを減らし、防いだ時間を有効に活用する


ねらい


 本稿は、現在、職場で行われている業務上で発生しているムダ時間を対象とした業務改善の考え方・進め方です。こうしたムダ時間は本来、活用される経営資源ですが多くの職場では、それに気づかずにムダ時間が浪費されています。
 そのムダ時間を本稿では「減らせるムダ時間」と「防げるムダ時間」を区分し、ムダ時間の存在に気づき、創出し、組織使命・目標を実現に活かす業務改善の考え方、進め方を提案しています。

1.職場のムダ時間とは


(1)職場のムダ時間とは


 ムダとは「役に立たないこと、それをしただけの効果がないこと」とされていますが、本稿が焦点を当てる職場でのムダ時間とは、①組織使命・目標の実現に効果がない業務・活動に費やしている時間です。また、②効果があっても時間をかけすぎている業務・活動でも発生しています。

 2つの観点から、例えば、㋐ミス対応にかけている時間㋑利用されない報告書・会議資料の作成時間㋒報告だけになっている会議㋓手待ちとなっている時間はムダ時間と言え、改善によりムダ時間を減らすことが可能です。
 また、㋔目的が不明な業務の時間㋕過剰サービスによる時間㋖書類などの保管・管理時間㋗移動時間㋘管理間接業務時間などは以前から「やることになっている」との固定観念、前例踏襲発想で継続されている業務の中にもムダ時間が発生している可能性があります。

(2)ムダ時間は膨大になっている


 時間は見えない、気づかないうちに膨大な時間を浪費してしまっています。例えば、ミスが発生した場合、㋐ミスを修正する㋑ミスから派生したクレームへの対応などへの時間が発生します。加えて、㋒再発防止策を検討する会議の時間(時間×参加者)㋓再発防止策を周知・説明する時間㋔再発防止策を徹底する時間が発生しています。また、例えば、印刷物に関わるものであれば、㋕回収・廃棄㋖新規設計・配布などの時間も発生していますが、これらの時間の膨大さを意識せず、共有せず、同じようなミスが繰り返されている職場が見られます。

2.ムダ時間の改善で創出した時間の活かし方


 本稿がムダ時間の改善を対象にした業務改善を進めるのは、その効果を組織使命・目標実現に役立つ業務への資源投入することです。それには、㋐従来、対応が不十分な領域への投入とともに、㋑既存業務を効率化する活かし方があります。具体的な活用先を下記に記載します。

(1)創出した時間の活用


①ワーク・ライフ・バランス型職場の実現
 現在、多くの職場では「ワーク・ライフ・バランス型職場の実現」を 経営課題として多彩な取り組みが行われています。ワーク・ライフ・バ ランスとは、働く人々の生活において仕事とそれ以外の部分がバランス の取れた状態です。組織として制度導入を中心にワーク・ライフ・バラ ンス支援が行われていますが、一人ひとりが希望する時に同僚に気兼ね なく制度を利用できることなども含めた環境整備が必須です。業務改善 により創出した時間を残業時間の低減や休暇取得に活用します。

②プロジェクトの質の向上
 組織として競争優位を実現するためには、変化する市場・顧客ニーズ の変化に対応するとともに、競合に対して差別化を進めていく必要があります。そのために組織は多様なプロジェクトを立ち上げています。常に新たな取り組みであるプロジェクトの企画構想や計画の質を高めるには、策定に一定の時間を必要とします。
 また、プロジェクトの持つ不確実性に対するリスクマネジメントや、多彩なメンバー間の協働を促進するためのチームビルディングには十分な時間の投入が必要です。業務改善で創出した時間をプロジェクトの質向上につながる活動に投入します。

③提供サービスの充実化・高度化
 顧客と接点のあるサービス業務の質を高めるための時間を増やします。 例えば、顧客とのコミュニケーションの密度を高めたり、ニーズに適したサービス提供に向けて準備(段取り)をする時間です。
 また、サービス品質の維持・向上に欠かせない上司や同僚との‘報連相’を充実させることにも創出した時間を活用します。

④人材の育成
 非定型業務には実務体験を通じて習得が可能なスキルやノウハウが あります。それに有効なOJTには一定の時間が必要であり、業務改善で 創出した時間を活用します。

(2)既存業務の効率化


①業務の安定化
 ミス再発生の背景として、再発防止には根本的な対策の策定と徹底が必須であるにもかかわらず、多忙などの理由で対症療法となっていることがあります。業務改善で創出した時間を当該職場で確実に機能する再発防止策を創り上げたり、その対策を職場内に徹底するために時間を投入します。

②業務基盤の構築
 たとえば、業務の属人化を解消し、誰が担当しても”同じ業務品質と投入時間”にするために、業務マニュアルの活用を選択する職場があります。この場合、業務を標準化することや、利用者にとって使い易い業務マニュアルの作成が求められます。加えて、作成されたマニュアルは実務で徹底されなければ成果はでません。こうした取り組みには一定の時間が必要であり、業務改善で創 出した時間を投入します。
                                 了