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ムダを”減らし、防ぐ”業務改善    後編 4つのムダ時間と改善アプローチ


3.4つの改善対象

(1)「減らせるムダ時間」と「防げるムダ時間」


 「①減らせるムダ時間」とは、多くの職場で見受けられる業務の目的が曖昧なまま、引き継いだやり方で業務を行っている場合、そもそも不要な業務であれば、それを止めることや、やり方を変えることで「減らせる余地がある時間」をさします。定例会議で配布される資料の中で活用されていないにもかかわらず、作成している資料を止めることも「減らせるムダ時間」に入ります。

 一方、「②防げるムダ時間」とは、本来起きてはならないミス、事故、クレームなどトラブルへの対応には莫大な時間がかかっています。逆に言えば、そうしたトラブルが発生しなければ、対応時間も発生しません。これが「防げるムダ時間」です。

(2)ムダ時間に気づいているか、気づいていないか


 (1)で説明した2つのムダ時間のタイプについて、気づいているか、気づいていなかに分けることができます。職場では、「気づいている」メンバーもいれば、「気づいていない」メンバーもいます。よって、改善対象として、「③気づいているムダ時間」「④気づいていないムダ時間」に区分できます。

(3)4つの改善対象
(1)ではムダ時間のタイプとして、「①減らせるムダ時間」と「②防げるムダ時間」に分けました。また、(2)では、ムダへの気づきの視点から「③気づいているムダ時間」と「④気づいていないムダ時間」に分けました。それらの組み合わせからムダ時間の改善対象の4つ(下図)が整理できます。

A領域(①×③)は、減らせるムダ時間が発生していることに気づいているにも関わらず、それが放置され、時間創出の機会損失が起きている状況です。例えば、会議などではメールで済むにも関わらず、開催されていたり、会議の趣旨に関係のないメンバーが集められているなどです。

B領域(②×③)は、ミスなどが発生し、その対応にかけたムダ時間に、既に気づいているはずであるが、将来、再発が危ぶまれ、ムダ時間発生の脅威がある状況です。例えば、ミスの他、クレーム、事故、ヒヤリハットなどが挙げられます。

C領域(①×④)は、減らせるムダ時間があるにもかかわらず、それに気づいていない時間創出の機会が埋もれている状況です。例えば、現状の場当たりでな業務の進め方で発生している活動の手戻りなどを計画的な業務に変えることで時間が創出できたり、前例踏襲で進めてきた業務のやり方を変えたり、分担を再編成することで時間を創出できる業務・活動が対象です。

D領域(②×④)は、B領域とは異なり、ミスなどは発生してはいないが、将来、発生する可能性(リスク)がある潜在的な脅威がある状況です。予防などのリスク対応することで発生を防止する、または発生しても影響を最小に抑える取り組みでムダ時間発生を防ぐことが可能な業務・活動が対象です。例えば、担当者が変更することでミスが発生しそうな業務・活動です。

4.対象別業務改善の方向性


 業務内容や状況によって対策は異なります。ただし、4つの領域の特徴からの基本的方向性は以下の通りです。

(1)対象A
 迅速に改善に取り掛かることが求められますが、放置されている理由を明らかにして、その対応からはじめます。

(2)対象B
 既に起きたことであり、何らかの対策を行っているはずですが再発しています。その対策が不十分だったことも含めて、再度発生した原因を明らかにします。例えば、対策自体は良い内容であっても職場内での徹底が不十分だったかもしれません。職場での実態、原因に基づく実効性を高める対策づくりと徹底を図ります。

(3)対象C
 埋もれている改善余地に気づくことからはじめます。多くの職場では「手段発想(業務ありき)」による業務の継続が気づきを妨げている場合が見られます。よって、改善余地の発見に向けて、全ての業務・活動の目的を点検することから始めます。例えば、「なぜ、この業務を行っているのか、止めたら問題が発生するのか」の観点で業務を棚卸します。

(4)対象D
 過去に起きた問題から既存業務に潜むリスクを洗い出します。例えば、属人化されていた業務の担当者が人事異動になり、業務方法が不明のまま新たな担当者がミスをしたなど、職場として一定の品質を一定の時間内で提供できなくなるリスクを洗い出すことからはじめます。

 上記はシンプルな方向性で着実に進めていくためのスタートとして職場での業務改善に適しています。

5.改善ターゲットに適したアプローチ

 業務改善に慣れていない職場は、「闇雲・場当たり・総花的」に業務改善を進めるのではなく、改善のターゲットを絞り込み、その特性に適した進め方を進めていくことが成果につながります。

 業務改善に慣れていない職場、業務改善を行っても失敗している職場は、上記4つ対象からターゲットを明確化し、適したアプローチを選択することからはじめましょう。

*本稿は『ムダ時間を減らし、ムダ時間を防ぐ業務改善入門~事例でわかる職場でできる4つの対象別業務改善アプローチ』をベースにしつつも多くの職場での業務改善で直面している課題に対する内容に焦点を当てています。
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