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第1回 ねらい:何のために、誰に活用してほしいのか

はじめに


 本稿は、今まで政策立案の経験のない実務者で構成されるチームが地域問題を解決するための政策を立案する際のガイド(手引き)です。具体的には政策立案に関する知識、立案する手順、立案内容の質を高める視点、立案で利用する手法、立案内容を見える化し、共有するためのフレーム・フォームなどのツールです。

 読んでいただきたい(ガイドを活用していただきたい)のは、
㋐はじめて政策を立案しようするチームのメンバー

㋑政策立案の経験がないメンバーで構成される職場、プロジェクトチームの 
 係長・チームリーダー、プロジェクトリーダー

㋒政策形成能力開発を目的とする政策立案プログラム研修・ワークショップ
 を担当する講師・事務局メンバーの皆さんです。
 
 本ガイドの特徴は、今まで政策を立案したことのない実務者が政策を立案する際に実務者が陥りやすい罠を回避し、地域問題を解決できる政策を立案するための手順、視点、手法・ツールを解説しているところです。その内容は、弊社が行ってきた政策形成人材の育成を目的とした「プロジェクト型人材育成:政策立案プロジェクト」を通じてまとめた“実務者の政策立案”に対して効果的なサポートの考え方、進め方、その過程で活用した手法・ツールの使い方です。
 

1.ねらい


 現在、政策が執行されたにもかかわらず、問題が解決されない事例が多く報告されています。その背景には立案された “政策の質”が不十分なまま執行が始まっていると指摘されています。

 本稿のねらいは、今まで政策を立案したことない実務者が、“政策の質”に影響している要因を理解し、実効性のある、かつステークホルダーに理解・承認される立案するために本稿の内容であるガイド(手引き)を活用してもらうことです。
 

2.ガイド活用対象者


 本稿は次の方々に活用してもらうことを想定した内容です。まず、㋐これから政策を立案しようするチームのメンバー、㋑政策形成の経験がないメンバーで構成されるチームによる政策形成を展開する際の係長・チームリーダー、プロジェクトリーダー、㋒政策形成研修やワークショップを担当する講師・事務局メンバーの皆さんです。
 


3.ガイドの活用方法


 地域の問題を解決するための手段である政策を立案する取り組みは、チームメンバーが主体的に考え、活動した結果を表現することが大切です。ただし、政策立案に慣れていないチームメンバーは自己流・場当たり的に進める傾向があり、本来の目的に適した能力開発につながらないリスクがあります。こうしたリスクを回避し、地域の問題解決を実現できる質の高い政策を立案するためにガイドを活用します。

 その活用方法は、想定読者㋐である自ら立案するチームは、ガイドに基づき政策立案を進めます。また、想定読者㋑職場・チームをサポートする係長やリーダーと、想定読者㋒研修やワークショップでの講師・事務局は、チーム活動を適切にサポートするためにガイドを活用します。

4.サポートの役割


(1)サポートの位置づけ
 サポートは指導ではなく、あくまでもチームやそのメンバーの主体性を保ちながら、その活動や成果物が目的・目標と乖離が生じた場合、それに自ら気づき、自ら修正することをハンズオンで支援することです。
 
(2)地域・問題特性に適した立案の進め方をサポート
 地域の問題解決には、正しい答えがなく、状況に適した答えを創り出すことが求められます。地域の問題を解決するための政策形成能力は講義や事例演習では習得が難しく、直面した問題解決において成果を出せない場合があります。研修など学習機会があっても、実践では学んだ知識を活かせず、結局、自己流・場当たり的に進めて、失敗を繰り返してしまいます。

 その背景には、研修やワークショップで学んだことは頭では理解しても、実践での行動化にはつながらないからです。結果、①対策から発想する手段ありきの提案、②活動自体やアウトプットを成果として重視する、③判断を過去の経験、前例、そして他の事例を過度に重視する、④提案(言いたいこと)の根拠が曖昧になってしまうからです。

 ハンズオン・サポートは、自主性を重んじながらも成果物を創り上げ、語り合いによってその質を確認し、めざす姿とのズレをチーム、メンバーが自覚し、自ら見直しするサイクルを短く、何回転も行うことを通じて学習しながら政策立案の質を高める取り組みです。

 こうしたハンズオン・サポートは、①手段ありきから問題起点を重視する。②アウトカムを重視する。③地域の実態や問題分析を重視する。④筋道立てた考え、表現を重視するという「アウトカム実現に影響する政策立案のポイント」を頭だけの理解から実践での行動化につなげることになります。

 
(3)政策立案活動の効果・効率性を高めるサポート
 地域の問題解決はプロジェクトチームを組みながら展開する場合が多いことから、個々人の政策形成能力だけではなく、チームとしての効果的(質)・効率的(短い時間)政策形成を展開できるチーム・マネジメント力の強化も必須です。

 そこでチーム・マネジメントについても一定のサポートを行います。弊社が関わった多種多様なプロジェクト、プロジェクト型人材育成に参加した経験から言えることは、当初はチーム内で意見がかみ合わない、また、なかなか期待される成果物が生み出せないチームであっても一定のサポートにより最終的に「チーム対話や成果物の質」に大きな変化が起きることです。

 例えば、①チームビルディングの再構築、②生産性の高いチーム活動の進め方へ変更、③スケジュール管理(活動別分担、納期計画、進捗管理)などにより短い時間で質の高い成果物作成につながります。こうしたメンバーから気づきを引き出し、軌道修正につなげたアドバイス・サポート内容が手順に組み込んでいます。
 

5.これからの内容


 本稿では、これから以下の内容を掲載していく予定です。

【Ⅰ.政策形成の基本】
  1.政策形成の基礎知識
  2.実務におけるEBPM(根拠に基づく政策形成)
 
【Ⅱ.政策立案の考え方】
  1.政策立案の重要性
  2.政策立案の目標と重視すること
  3.残念な政策立案とその回避方法
 
【Ⅲ.政策立案の進め方】
  1.問題を提起する
  2.問題を分析する
  3.対策を立案する
  4.実施計画を策定する
  5.企画書を作成する
  6.政策提案(プレゼンテーション)を行う
 
【Ⅳ.立案内容の磨き方】
  1.磨く視点
  2.立案内容を磨くアプローチ
  3.第三者によるフィードバック
  4.チーム別活動の効果・効率性を高めるサポート

 
【Ⅰ.政策形成の基本】では、地域の問題解決をするために政策形成の基礎知識を理解します。また、昨今、重視されている根拠に基づく政策形成(EBPM:Evidence based Policy Making)について、実務においての考え方・進め方を解説します。

【Ⅱ.政策立案の考え方】では、政策立案をする前に押さえておくことを整理しています。まず、政策形成の核である政策立案の重要性を確認します。その上で政策立案の目標とその実現のために重視することを共有します。そして、政策立案において、その質を低下させてしまっている実務者が陥いやすい傾向を整理し、その回避方法を説明します。

【Ⅲ.政策立案の進め方】では、政策立案プロセスに沿って、それぞれの段階での目的、手順とともに、それぞれの段階で、めざす政策立案の姿を実現するために各段階の成果物の質を高めるためのポイントを解説します。

 例えば、問題設定段階では、設定した問題が当地域にとって“放置できない重大(深刻)な問題”であることをステークホルダーが理解できる内容と表現にするための内容です。これは政策立案を進めるチームメンバーが重視すべき内容です。またサポートする係長・リーダー、講師・事務局がチームメンバーをサポートする際のアドバイスの視点です。

【Ⅳ.立案内容の磨き方】は、3つの磨く方法を説明します。その中で最も効果的な第三者によるフィードバックの考え方、進め方、磨く視点を説明します。また、政策立案に慣れていないメンバーで構成されるチーム活動を効果的(質)・効率的(短い時間)で推進するためのマネジメントポイントを解説します。
                                 了