見出し画像

セーヌ川って・・・・

なんであんなに汚いの?(毒吐きw)
いや、正直な感想だ。
離れているからニオイを嗅ぎにいったりは出来ないけれど、写真という写真を検索してみても、水きれい~っていう写真はひとつもない・・・。

トライアスロンの選手は可哀想だ。パラは大丈夫なのかな?
確か競技が出来る状態にするために水質改善に資金をかけたんじゃなかったのか?
忘れてないぞ、春にはこんな記事をみた

フランスのパリでことし夏に開幕するオリンピックとパラリンピックで、トライアスロンなどの競技が行われるセーヌ川の水質改善に向けて巨大な貯水施設が完成しました。

2日、報道陣に公開されたのは、セーヌ川にほど近いパリ中心部の地下に建設された、直径50メートル、深さ30メートルの巨大な貯水槽です。

セーヌ川はことし7月に開幕するオリンピックと8月に開幕するパラリンピックでトライアスロンやマラソンスイミングなどの競技会場となっています。

しかし市によりますと、市内の下水施設が古いため、まとまった雨が降ると処理しきれない下水があふれて川に流れ込んでいるということで選手たちが泳ぐには水質の改善が必要だと指摘されてきました。

新たに完成した貯水槽は、競技用プール20杯分にあたる5万立方メートルの雨水などを一時的にためることができ、その後、時間をかけてポンプで下水処理場に送る仕組みで、5月にも稼働を始める予定だということです。

市では、川の上流で浄水場の整備なども同時に進めて水質の改善を図り、大会後の2025年夏には、市内3か所に遊泳場所を設ける方針です。

NHK NEWSWeb 2024年5月3日 7時33分

何だ、目標はオリンピックまでじゃなくて来年じゃん。
しかも、河川の汚れた水を浄水処理するわけじゃなくて、汚水があふれないようにタンクを作りましたーということだよ。
というか、雨水を貯めるためのタンクなら、その水が汚水で汚れているわけじゃないんだからそれは川に流したほうが汚れが薄まるからいいじゃない。
それとも街自体が汚いから雨水も汚いってこと?

それじゃ既に汚れているセーヌ川の水質はそのままってことだ。

なんであんなに汚いのかなと思って下水処理について調べて見てみたんだけど、ああ、なるほどね・・・という結果だった。
パリの下水はすべて雨水と汚水が同じ下水管を通る合流式(日本では分流式と合流式を併用)なので、処理能力を上回る排水があったり雨が降れば未処理の汚水混じりの水がセーヌ川に放水されてしまう。だから、雨が降ったらアウトなのだ。いや、なんというか日本人の目からみたら、豪雨というほどの雨でもないのにあふれてる時点でアウトだ。
あんな程度の雨で水質が悪化するリスクがあるのなら、オリンピック競技はもっと田舎の水がきれいなところでやるべき。

セーヌ川の水質については、100年以上遊泳禁止なのに何故競技で使うなんてことを考えたのだろう?

下水道を作ったことについては、下水道の歴史が古いということがパリのご自慢らしいけれど、下水処理場については探してもあまり情報が出てこない。
それで、パリの下水道がどこで処理をされているのかを調べてみたところ、パリの下水処理場はパリには無いのだという事がわかった。

パリの下水はどこで処理されているのだろうと思っていろいろ調べてみた。パリの下水道博物館の情報もかなり探したけれど、下水処理場の情報を見つけることは出来ず、ネットを探してわかるのは、駒沢大学が持っている古い資料くらいだったな。

駒大の資料によると、下水処理会社はパリにあるけれど、実際にはパリよりも下流のクリシーというところに下水は集められ、そこでゴミや砂や石を沈殿させた上澄みが、更に北にあるアシェールという大きな処理場に(セーヌ川の底にある管を使って)送られる。

それでも、下水道博物館の写真を300枚くらい見ていたら、とある地図が目に入った。
あーやっぱり下流に下水を送っているだけだ・・・。
パリの幹線下水道の地図を見ると、みんな北の方の1点に向かって流れている。つまり、パリ市内では下水処理をしていない。下水を下流の処理場に流しているだけだ。

セーヌ川はかなり大きな川で、フランス人としては流れているうちにきれいになるとでも思っているのだろうけれど、下水道が機能しているうえでこのくらい水質が悪いんだから、何もしなければきれいにはならないだろう。

水質は良好といいながら、大腸菌群とかBODとかCODとか発表していないよね。2年くらい前にBODが5mg/Lで道頓堀よりちょっと汚いかな~って言ってたけど、その時点で多摩川下流より10倍汚いから・・・。

ご参考までに、BODが5mg/Lってのは、比較的水の汚れがひどくても大丈夫な鯉などの魚がギリギリ生存できる濃度。

道頓堀川みたいな小さな川は、流量がすくないから自然浄化されないけど、セーヌ川ほど大きくて流量が多い川は、ある程度のよごれは流れていくうちに浄化されていくはずなのだ。そんな川が道頓堀川みたいな小さな川より汚いということはどういうことなのかと、フランスは考えないといけないと思う。

そもそも、200万人も人口があるパリに下水処理場をする場所がひとつしか無いってどういうことだろう?しかもパリ市外で処理しているって何?
同程度の人口がある札幌市だって10箇所以上下水処理場があるのにね。
東京都だって都内だけで13箇所、都下まで含めたら20箇所の処理場がある。

アシェールで下水処理をしていることについては、下水処理から出来た汚泥を農業用に使うからということなんだろうけれど、それでもね、アシェールの方式だと処理後の排水もかなり水質が悪い。

下水処理っていうのは、
1.沈砂池で大きなゴミや泥や砂を沈殿させる
2.第1沈殿池で2~3時間かけて汚れを沈殿させる
3.反応槽で活性汚泥※を添加して数時間~半日空気を混ぜてかき混ぜる。
(活性汚泥というのは微生物を含んだ泥で、これに空気を混ぜてかき混ぜることで下水中のゴミを微生物が分解したり、吸着したりして沈みやすくする働きがあります)
4.第2沈殿池で反応槽で出来た泥(活性汚泥)を数時間かけて沈殿させる。
(ここで出来た活性汚泥が反応槽に送られて再度使われる)
5.高度処理(ろ過やA2O法で有機物やリン、窒素を除去)
更に塩素などに接触させて大腸菌類などを殺菌して河川に放水

という・・・日本ではこういう流れになるのだけれど、どうやらパリでは1はクリシーという処理場に集められ、以下の処理はアシェールという処理場でやっているらしい。
クリシーとアシェールの間は、セーヌ川の底に管を作って送ってるらしい。
ちょっと気になるのは、ここで書いた5.の高度処理について、調べた限り見つからなかった・・・。(無いの?)

わたしが見た資料は古いけれど、それでもわたしが学生時代くらいの年代の資料だ。この汚水処理の工程の基本的なところは、その時代から変わっていない。

なんでそんなこと知っているかって?
実はそんなことを勉強させられる学部に通っていたからだ。
大学の厚生棟の地下には上下水道の処理を行う設備があった。
わたしの通っていた大学は、とある一級河川の上流にあるため、排水基準が大変厳しかった。大学で出た汚水は、下水の処理(もちろん高度処理を含む)をしたあと、上水道での浄水処理と同じ工程で浄水処理をして、飲める状態の水にして川に流していたのだ。

実習で水質検査もやったし、サンプルを採るために池に落ちた友人もいたw

日本は降水量が多いから水資源が豊富という風に思うかも知れないけれど、水質の管理も厳しく、排水基準が厳しいから川の汚れも少なくなったのだ。

なんか、オリンピックの選手村の件で環境負荷が~とか騒いでいるくせに、水に対しての意識がおかしいよ。
環境保護とかいうのなら、もっと勉強しやがれ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?