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音楽を飾ろう スタッフ編

 2018年のCEROのアルバム『POLY LIFE MULTI SOUL』を
p.f.a.c のワイヤーフレームと共に携えて海岸へ行ってみれば、誰かが組んだ流木のオブジェ?が出迎えてくれました。

 CEROとの出会いは10年ほど前。末っ子が小学校に上がり、
一人の時間にゆったりと音楽を楽しみたいという欲求が、久しぶりに湧き上がってきたころ。20代で3度の妊娠、出産。そして年々賑やかになる幼い子どものいる暮らしは、それ自体が体を揺さぶる音楽で、リズムで、詩であり歌であるような毎日…と、カッコつけることも出来ますが、とにかく賑やかで、騒々しく、彼らの爆発的な生命力と対峙することに、夢中になった日々でした。

 そんな暮らしにもひと段落ついたある日、YouTubeで見かけたCEROの音楽と映像が妙に心に残り、一人の時間によく聴いていました。2014年には念願のライブへ。野外フェスで
30分ほどのステージでしたが、自分の細胞がとびきり歓ぶ。そんな感覚を覚え、以降は繰り返しワンマンライブへ足を運ぶようになりました。

CEROのライブは、新木場スタジオコーストで行われることが多く
大好きだった会場。2022年に閉館。


 大きなミラーボールと真っ赤なオクタゴンスピーカーの下で、それぞれの日常から、少しだけ特別な空間に繰り出した観客たちが、CEROの奏でる音の波間に漂うように身体を揺らす。ステージの側から見れば、私たちは一人一人でありながら、うねる波のように、数多の水の粒子のように、重なり合って一つのシーンを、景色を、描いていたのだろうかと、この『POLY LIFE MULTI SOUL』を改めて聴きながら思い浮かべています。

わたしたちのなかを(魚の骨 鳥の羽根)
せわしく蠢くなにか(車のバネ 夜の雨)
わたしたちのなかを(花の蜜 虫たちの声)
せわしく蠢くなにか(貨物列車は森の方へ)
    track02『魚の骨 鳥の羽根』より

 12の楽曲で構成されたこのアルバムで、多くの曲に繰り返し現れる水のイメージ。それはゆるやかな川の流れであったり、滝壺へと急降下する激流であったり。弾ける飛沫は霧のように漂い、夜の川の水面はゆるく、ぬめやかに。そこに映る街の灯。川のように流れる車のライト。対岸にいる誰か。その誰かの体に、わたしたちの中にも又、絶えず流れる水。
 

静かな内房の海で、波の音は眠気を誘います。

 ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。1000年前も、1000年後も変わらないことと、刻々と変化し続けるものの存在を同時に描くようなCEROの音楽もまた、日々変化していて、同時代に追いかけていけることの喜びを感じさせてくれるバンドです。
 
Oh…dawn     雨は水面を叩き続け 
Obstacle lights     対岸に灯りが揺れ
Oh…dawn   いくつかの朝がこぼれ落ち
Obstacle lights 暗がりより深く青い水を渡り
Poly life, multi soul, across the river, oh what do you see?
Poly life, multi soul, 'round midnight, oh what a life!
       track12『Poly life multi soul』より

 ところで、アルバムタイトルにもなっているこの曲の『Poly life multi soul』とはどんな意味なのでしょう?

Polyは、ギリシャ語のpolys(much)に由来し、多数の~を意味する言葉をつくる接頭辞。
Multiもまた、ラテン語のmultus(much、many)に由来し、多数の~を意味する接頭辞。

ということなので、ポリライフマルチソウルはおそらく造語で、重なり合う多数のLife(=命、暮らし)と、数多のSoul(魂、思考、感情)というよく似た意味合いの言葉の連なりのようです。

 アルバム全体を通して描かれる様々な“水”の情景や、私たちが暮らす街の情景。そこで暮らす一人一人の目に映るものや、その思考や体を作る無数の物質。重なり合って、お互いがお互いを映しあうような、そんな世界観がとても魅力的です。

見ず知らずの誰かが組んでいた流木と
p.f.a.cのワイヤーフレームで偶然のコラボ遊びでした。

記事 スタッフ 大越 亜矢子


         
 




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