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A都市計画制度 6-都市施設


今回は都市計画法第11条の都市施設について扱います。都市に実際に存在するものについて明確な言及があるため、都市計画制度がそうした施設についてどのようにコントロールしているのかがわかるかと思います。

都市施設とは

法律を引用します。長いので読み飛ばしても大丈夫です。

都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる施設を定めることができる。この場合において、特に必要があるときは、当該都市計画区域外においても、これらの施設を定めることができる。
一 道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
二 公園、緑地、広場、墓園その他の公共空地
三 水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場その他の供給施設又は処理施設
四 河川、運河その他の水路
五 学校、図書館、研究施設その他の教育文化施設
六 病院、保育所その他の医療施設又は社会福祉施設
七 市場、と畜場又は火葬場
八 一団地の住宅施設(一団地における五十戸以上の集団住宅及びこれらに附帯する通路その他の施設をいう。)
九 一団地の官公庁施設(一団地の国家機関又は地方公共団体の建築物及びこれらに附帯する通路その他の施設をいう。)
十 一団地の都市安全確保拠点施設(溢いつ水、湛たん水、津波、高潮その他の自然現象による災害が発生した場合における居住者等(居住者、来訪者又は滞在者をいう。以下同じ。)の安全を確保するための拠点となる一団地の特定公益的施設(避難場所の提供、生活関連物資の配布、保健医療サービスの提供その他の当該災害が発生した場合における居住者等の安全を確保するために必要な機能を有する集会施設、購買施設、医療施設その他の施設をいう。第四項第一号において同じ。)及び公共施設をいう。)
十一流通業務団地
十二一団地の津波防災拠点市街地形成施設(津波防災地域づくりに関する法律(平成二十三年法律第百二十三号)第二条第十五項に規定する一団地の津波防災拠点市街地形成施設をいう。)
十三一団地の復興再生拠点市街地形成施設(福島復興再生特別措置法(平成二十四年法律第二十五号)第三十二条第一項に規定する一団地の復興再生拠点市街地形成施設をいう。)
十四一団地の復興拠点市街地形成施設(大規模災害からの復興に関する法律(平成二十五年法律第五十五号)第二条第八号に規定する一団地の復興拠点市街地形成施設をいう。)
十五その他政令で定める施設

都市計画法第11条 都市施設

要は、行政が権限を持って配置できる施設のことです。あるいはインフラと考えてください。例えば道路(施設らしくない例ですが)。これは大抵自治体がここに道路を建設しよう!(実際は都市計画決定を経るため複雑)という感じで決めます。もちろん、全ての自治体がこの中の都市施設を設置するわけではありません。例えば、ごみ焼却場は都道府県に設置権限がありますが、全ての市町村に置くことはまずありません。実際に都市計画に定められる都市施設はこの中から絞られ、これを都市計画施設といいます。都市計画施設の予定地に指定された土地には建築制限等の規則がかかります。京都府の例では、都市施設であるごみ焼却場は8つあり(うち1つは計画のみ。存在しない)、1つのごみ焼却場に複数の自治体で発生したごみが燃やされていることになります(京都府は都市計画区域の数が13なので、正確には複数の都市計画区域のごみが集まる)。都市計画施設は広域的な範囲での土地利用が考慮されています。京都府の場合では京都市内にごみ焼却施設がありません。おそらく京都の景観を配慮したものだと考えられます。

また、総務省の制度に広域連合というものがあります。広域連合とは、複数の自治体にまたがる広域的なニーズを柔軟に処理するもので、1995年にスタートしました。広域連合の対象自治体は都道府県単位(Ex.関西広域連合)から特別区まで幅広いですが、特に近隣市町村で結成される広域連合ではごみ焼却場等の都市施設を分散させて財政効率化に取り組む地域も見られます。

都市計画決定

都市計画(地域地区・都市施設・市街地開発事業etc.)について、原案が提示され、住民が参加できる公聴会→公告/縦覧の後に自治体の都市計画審議会を経て上位機関との協議して決定されることを都市計画決定といいます(下図参照。また決定主体が市町村と都道府県の場合ではプロセスが異なる)。ただし、物理的に存在する都市施設に関しては、この段階ではあくまで「決定」であって、必ず事業化するわけではありません。それには都市計画決定とは別の事業認可が必要ですむしろ決定されただけで実現していない都市計画施設も多数あります。ですが、都市計画決定されると建築制限が発生するため、地域にとっては依然として重要です。

都市計画決定の流れ これでもかなり簡略化したため注意

都市計画道路

道路に関して詳しく記述します。都市計画道路とは、道路の中でも健全で文化的な都市生活と機能的な都市活動の確保のために、都市基盤として都市計画決定した道路を指します。分かりにくいですね…そもそも道路というと久屋大通のような100m級のものから商店街の裏の路地まで色々考えられるのですが、ここでの(道路法で定められる)「道路」とは高速自動車国道・一般国道・都道府県道・市町村道のことです(例えば農道は含まない)。詳細は省きますが、これらは議会の議決などを含む綿密なプロセスによって決定され、一部例外を除けば規模は大きめです。その中でも都市計画決定されるものが都市計画道路であって、都市計画道路は主に広域的な交通ネットワークを担っていたり、幹線道路として地域の軸となっていたりします。

札幌市の都市計画道路。道央自動車道や大通などが都市計画道路に指定されている。オレンジ色の市街化調整区域では都市計画道路は最低限しか見られないことにも注目。
篠路駅周辺を拡大。未着手の都市計画道路が線路沿いにあることがわかる。現在は住宅などが建つ

そして日本には都市計画道路が合計71,209km(🌏2周弱!)あります。ただしこの中には都市計画決定されただけの未着手都市計画道路も含まれます。(長期)未着手都市計画道路は、工事が始まっておらず、現在は建造物が建つなど一見都市計画道路とは分かりません。ただし、都市計画道路建設予定地では取り壊しが簡単にできるよう前述の建築制限がかかります。例えば、建物の高さは2階建て以下(東京都の大部分は3階までに緩和)、地下禁止、構造は木造・鉄骨造・コンクリートブロック造などです。この建築制限ルールは都市計画道路以外の都市施設も原則同様です。ちなみに長期未着手都市計画道路の大半は戦後に勢い余って計画したものの、その後の時代の流れで建設する意義が薄れました。なので近年は建築制限を廃するためにもこうした長期未着手都市計画道路の見直しが進んでいます。

都市計画は全員を満足させる綺麗事ではなく、定められた条件の中で最適を目指すものだという主張を以前にしましたが、都市施設を調べると、まさにそのことが反映されていると感じました。

参考文献

  • 都市計画法

  • 令和5年度都市計画現況調査

  • 国土交通省 都市施設計画

  • 総務省 

  • 神戸市

  • 札幌市

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