A都市計画制度 6-都市施設
今回は都市計画法第11条の都市施設について扱います。都市に実際に存在するものについて明確な言及があるため、都市計画制度がそうした施設についてどのようにコントロールしているのかがわかるかと思います。
都市施設とは
法律を引用します。長いので読み飛ばしても大丈夫です。
要は、行政が権限を持って配置できる施設のことです。あるいはインフラと考えてください。例えば道路(施設らしくない例ですが)。これは大抵自治体がここに道路を建設しよう!(実際は都市計画決定を経るため複雑)という感じで決めます。もちろん、全ての自治体がこの中の都市施設を設置するわけではありません。例えば、ごみ焼却場は都道府県に設置権限がありますが、全ての市町村に置くことはまずありません。実際に都市計画に定められる都市施設はこの中から絞られ、これを都市計画施設といいます。都市計画施設の予定地に指定された土地には建築制限等の規則がかかります。京都府の例では、都市施設であるごみ焼却場は8つあり(うち1つは計画のみ。存在しない)、1つのごみ焼却場に複数の自治体で発生したごみが燃やされていることになります(京都府は都市計画区域の数が13なので、正確には複数の都市計画区域のごみが集まる)。都市計画施設は広域的な範囲での土地利用が考慮されています。京都府の場合では京都市内にごみ焼却施設がありません。おそらく京都の景観を配慮したものだと考えられます。
また、総務省の制度に広域連合というものがあります。広域連合とは、複数の自治体にまたがる広域的なニーズを柔軟に処理するもので、1995年にスタートしました。広域連合の対象自治体は都道府県単位(Ex.関西広域連合)から特別区まで幅広いですが、特に近隣市町村で結成される広域連合ではごみ焼却場等の都市施設を分散させて財政効率化に取り組む地域も見られます。
都市計画決定
都市計画(地域地区・都市施設・市街地開発事業etc.)について、原案が提示され、住民が参加できる公聴会→公告/縦覧の後に自治体の都市計画審議会を経て上位機関との協議して決定されることを都市計画決定といいます(下図参照。また決定主体が市町村と都道府県の場合ではプロセスが異なる)。ただし、物理的に存在する都市施設に関しては、この段階ではあくまで「決定」であって、必ず事業化するわけではありません。それには都市計画決定とは別の事業認可が必要です。むしろ決定されただけで実現していない都市計画施設も多数あります。ですが、都市計画決定されると建築制限が発生するため、地域にとっては依然として重要です。
都市計画道路
道路に関して詳しく記述します。都市計画道路とは、道路の中でも健全で文化的な都市生活と機能的な都市活動の確保のために、都市基盤として都市計画決定した道路を指します。分かりにくいですね…そもそも道路というと久屋大通のような100m級のものから商店街の裏の路地まで色々考えられるのですが、ここでの(道路法で定められる)「道路」とは高速自動車国道・一般国道・都道府県道・市町村道のことです(例えば農道は含まない)。詳細は省きますが、これらは議会の議決などを含む綿密なプロセスによって決定され、一部例外を除けば規模は大きめです。その中でも都市計画決定されるものが都市計画道路であって、都市計画道路は主に広域的な交通ネットワークを担っていたり、幹線道路として地域の軸となっていたりします。
そして日本には都市計画道路が合計71,209km(🌏2周弱!)あります。ただしこの中には都市計画決定されただけの未着手都市計画道路も含まれます。(長期)未着手都市計画道路は、工事が始まっておらず、現在は建造物が建つなど一見都市計画道路とは分かりません。ただし、都市計画道路建設予定地では取り壊しが簡単にできるよう前述の建築制限がかかります。例えば、建物の高さは2階建て以下(東京都の大部分は3階までに緩和)、地下禁止、構造は木造・鉄骨造・コンクリートブロック造などです。この建築制限ルールは都市計画道路以外の都市施設も原則同様です。ちなみに長期未着手都市計画道路の大半は戦後に勢い余って計画したものの、その後の時代の流れで建設する意義が薄れました。なので近年は建築制限を廃するためにもこうした長期未着手都市計画道路の見直しが進んでいます。
都市計画は全員を満足させる綺麗事ではなく、定められた条件の中で最適を目指すものだという主張を以前にしましたが、都市施設を調べると、まさにそのことが反映されていると感じました。
参考文献
都市計画法
令和5年度都市計画現況調査
国土交通省 都市施設計画
総務省
神戸市
札幌市
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