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A都市計画制度 4-地域地区①用途地域


不動産でも耳にする、用途地域の登場です。都市計画では「用途地域」が重要で、日本の都市構造に直結する概念と言っても過言ではないでしょう。

地域地区

用途地域に入る前に、地域地区の確認をします。地域地区とは、土地利用の決定用途地域)と、特殊な土地利用に対する特例を設けたものです。用途地域とは体系上、地域地区のうちの1つなのです。地域地区は合計21ありますが、用途地域のように有名かつ普遍的なものから、特殊でマイナーなものまで色々あります。都市計画法では第8条に該当します。

用途地域

市街地(市街化区域・非線引き都市計画区域の一部)の土地利用を住居系・商業系・工業系の計13に分類したものです。一般に、閑静な住宅地の中に風俗店があるとか、一等商業地の区画に化学工場が建設されるという土地利用は誰にも望ましくない、と思います。それらを制度的に規制するのが用途地域です。用途地域の決定は市町村が行います(東京23区を除く)。用途地域によってそのエリアに建てられる建物用途に加え、建蔽(けんぺい)容積率なども定められます。建蔽率・容積率によって建物の規模感や高さが決まります。もちろん緩和措置・例外規定が山ほど存在するため日本の都市が100%このルールを満たすことはありませんが、大半は用途地域によって地区の特徴が決定づけられます。
 具体例として、用途地域の一種である第一種低層住居専用地域にて建設できる建物は住居・学校(高等教育機関は除く)・寺社/神社/教会・公衆浴場・診療所・保育所くらいです(条件を満たせばコンビニもOK)。建蔽率は30(MIN)〜60%、容積率は50(MIN)〜200%のいずれかになり、商業地域では一部の工場以外は全て建てられ、建蔽率は80%(MAX)、容積率200〜1300%(MAX)のいずれかです(建蔽率と容積率の判断は市町村が行う、ただし建蔽率・容積率は用途地域の指定がない場所も定められる)。なので商業地域の方が大規模で階高の高いビルが建てられるような仕組みになっています。この類の詳細な内容は都市計画法ではなく建築基準法に記されています。

ここで全13の用途地域を順に紹介します。長いですがお付き合いください。説明は公式のものというよりは筆者の見解になります。

こんな感じです。当初は13も詳細に別れておらず、段々と細分化されていきました。最初(以前の都市計画法の時点、1919年)は商業地域・住居地域・工業地域の3種類で、新都市計画法の時点からは8種類(1970)→12種類(1992)→13種類(2017)と増加し続けました。これは時代背景を反映しており、例えば最新の田園住居地域は、都市農地周辺に対して建築物を規制して農業の利便の増進と、周囲の住環境の調和を意図した用途地域ですが、これは都市農地に対する見方が「宅地化するべきもの(=農地は都市に不要)」→「都市に必要なもの」というパラダイムシフトが生じたため、それに対応した用途地域が追加されたのです。
 次に、具体的な例を地図上で確認します。

東京都(島嶼部を除く)の用途地域

上図は東京都(島嶼部を除く)全体の地図です。細かい用途は分かりにくいですが、大まかに言えば都心部(東京駅周辺、副都心)が赤色の商業系臨海部が青色の工業系、それ以外の部分(≒郊外)が緑〜黄色の住居系であるかと思います。なお、東京都のうち色が塗られていない地域は市街化調整区域・非線引き都市計画区域・都市計画区域外です。

銀座周辺を拡大。日本屈指のショッピング街ゆえに用途地域はほぼ商業地域

用途地域が日本の都市計画における規制の役割を果たしているというイメージが残ればいいかと思います。次回は残りの地域地区について紹介します。

参考文献

  • 国土交通省 都市計画法制

  • 国土交通省 土地利用計画制度

  • 建築基準法

  • 国土交通省 都市政策のこれまでのあゆみ


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