4こま5

4コマ漫画持論(にかこつけて友人のアホな思い出を書き残す会)前編 -コマ割り-

 私の漫画はすごい面白い。自信がある。面白くなるようにがんばって描いてるからだ。だから、今現在の自分にとってはめちゃくちゃ面白い。

 だが明日、突然頭を強打などして漫画の描き方を忘れたらどうすればいい……? そんな不安に襲われたので、どうやって今私が漫画を描いているかメモしておくことにした。


 ひとつ実録4コマを描いてみよう。実録……。面白い出来事を漫画に描いて残しておくのはとても楽しい。文章や写真で残す手もあるが、私は漫画が好きだ。

 内容はこれだ。

---先日、友人(仮にTとする。小学校以来の馴染み)との会話で、かつては放課後にTの家でゲームをすることがよくあったなあ、という思い出話になった。Tは言った。「あんたが私のさ、どうぶつの森(ゲームキューブ)の村の掲示板に文章残してったことがあったじゃん」そんなこともあった。しゃらくさいガキちゃんだった当時の私が書いた文章は明確には覚えていないが、後から読んだそいつがプンスコするように小馬鹿にした内容だったことは確かだ。「ああ、たしか最後に『IQ3のTへ』って書いたな!」「そう。あのねえ、その時、私IQの意味知らなかったんだよね」私は噴いた。Tも笑い転げながら続けた。「わ~IQってなんだろ~。鰤ちゃんは色んなこと知ってるな~。って思ってた」

 さて。この会話をしたときは抱腹絶倒したものだが、文章にすると私の筆の拙さなのかそこまで面白くない。Tとのつきあいのない読者諸氏におかれては全然おもしろくないかもしれない。これを漫画にしよう。

 だいたい1枚の画像に収めて描くのが好きなので、これも4コマ以内にまとめたい。そうなるとどこをどう切り取るかという問題になってくる。4コマというのはかなり少ないのだ。さらに面白いテンポを作ろうとしたら、1コマに入れる文量はよっぽど少ないほうがいい。特にオチなんかもう無言が一番好きといっていいほどだ。だから、情報の取捨選択、要約したセリフ、そういうところがたいへんになる。4コマ漫画は4コマの数が決まっているから単純かと思いきや、どこでコマを区切るか考えるのはここでも大きな課題なのだ。

 たとえばこうやってコマ割りしてみよう。

 当時の様子をまとめてみた形だ。4コマ漫画でおなじみの「起承転結」そのままのコマ割りになっている気がする。

 で、先述した情報の区切り方まとめ方なのだが、おわかりいただけるだろうか? 1コマめに「十年前にTの家でゲームしている私とTがいて私がコントローラーを握りどうぶつの森でなにか書いている」という相当量の情報を詰め込んでいる。けっこういけるものだ。先に書いたように、私はオチのコマの情報量をとにかく少なくしたいので、1コマめや2コマめに詰め込めるだけ詰め込みたい。なのでめちゃくちゃセリフが長くなったりするが、そういうのが好きだ。

 さて。「いや、これではぜんぜんおもしろくない」と思う。ちなみに普段だったら4コマ漫画のコマ割りは脳内でやってるのでボツになったやつは初めて描いた。

 ぜんぜんおもしろくない。これではかわいい子供の会話である。違うのだ、私が爆笑したのはTが当時アホだったことと、今でもそんなに変わらずアホであることと、それを自分から暴露してきたことなのだ。

 かきなおす。

 現在の二人をはじめと終わりに入れてみた。1コマめに入れた情報をちょっと削って、現在のTに言わせた形だ。情報をセリフに入れるか、モノローグやナレーションにするか、図示するか、そういう選択肢がわれわれにはある。それを柔軟に変えていこう。

 ……いや、これでもまだ違う。ほのぼの4コマだ。爆笑4コマではない。何が足りないのか? おもしろいはずのオチの破壊力が足りていない! もっとインパクトを強く「IQって何」を言わせたいんだ!

 かきなおす。

 オチの前に1コマ溜めを入れ……あととにかく集中線だ!これでインパクトはだいぶ違う! 溜めのコマを空けるために1コマめと2コマめは合体させた!詰め込もうと思ったらいくらでも詰め込めるんだよ! かなりよくなったぞ!


 ……さて、理屈をこねてここまでコマ割りを工夫していたが、ところで私には好きなオチのパターンがある。伝家の宝刀にしてもいいくらい乱用している。「ブン投げぐるぐる目」といったらいいだろうか。略して無言爆死だ。全然無言じゃないし爆死もしてないけどこの言葉の語呂が好きなのでこれで通すぞ。

 無言爆死……それはオチのセリフを言うだけ言ってツッコミのセリフを言わないオチ……ツッコミは読者諸氏に任せる!俺が描くのはちょっとヤバい目でヤバいことを言っているオチ要員だけだ!

 といっても、「あっこれオチのセリフだってわかりづらいな」とか「いくらなんでも文句言われたほうがおもしろいな」などというときは、すごい目で言ってるやつを見てるツッコミのキャラを添えたり、ささやかな暴言をセリフだけ添えたり、そういうパターンもある。(下図)

 無言爆死を今回も使っていこう! 別パターン1のほうを採用した!

 理屈でいっぱい考えて、そのうえで自分の好き勝手なものをブッ込めば、とても楽しい。今回はそういうことを言いたかった。頭を強打した未来の私がいたら、とりあえずこれだけは伝えたかった。楽しい。

 あと、漫画に情報を入れる方法は複数ある、と先述した。それをどう選ぶか、ということに関しては、「面白くなるように選べ」としか言いようがない。どうやったら面白くなるんだよ! これはたとえば積み木をやっていて、どうすれば上にきちんと積んでいけるかを探るようなことである。そりゃ、物理的な計算をする方法だってあるはずだが、描いている身としてはコレを乗せたりアレを乗せたりをトライアンドエラーで試して、手を離したら倒れるか否かを指先の感覚で測っているような気分なのだ。やっているうちに感覚が身について、あと乗せやすい積み木の形も覚えてくる。どうやって積んでいるの?と聞かれたら、倒れないように積んでいるんだ、という他ない。

 まあ、問題は、私の心の中の面白さという物理法則が他人と違うことがあるということだ。私がやっと積み上げたタワーがある人の系では瓦解するか爆発するかという事態になることはあるだろうし、この記事で描いたコマ割りを読んでぜんぜん面白くないとおもったら、きっとそういうことなのだろう。


 というわけで、漫画持論・コマ割り編だった。こんなことを電車に乗りながらとかお風呂に入りながらとかに考えて、いつも4コマ漫画を描いているのだ。3コマだったり2コマだったり1コマだったりするが、おもしろいテンポのためには柔軟にやる。4コマ以下だったら私の頭のメモリでもナントカなるので4コマは好きだ。


 後編は作画、特に顔を描くときの楽しさを書こうと思う。

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