絵のメイキング④：はんぺん＆はんぺん

【メイキング第4回のテーマ：重なり】

　この記事メイキングっていうか講座じゃない？ まあいいや。

　第一回で、はんぺんの描き方について書いた。

　はんぺんですね。

　今回はその次のステップについて書こうと思う。ずばり、「はんぺんをふたつ描く」だ。

　はんぺんがふたつですね。

　しかし、「はんぺんをふたつ描く」……これは、はんぺんをひとつ描くことと比べて、遥かにムチャクチャ難しい。

　言ってしまえばはんぺん2つの絵ははんぺん1つの絵の1024倍くらいの難しさがある。oneぺんをすらすらと描ける人でも、twoぺんを描こうとするとつまづくかもしれない。キャラひとりの絵とキャラふたりのドスケベイラストの難度にも大きな開きがあることはよくしられている。

　はんぺん2つの何が難しいのか……。理由は多い。「はんぺんを同一空間上に矛盾なく配置するために脳内で行う3D空間演算がたいへん」とか「はんぺんたちの位置関係が多岐に渡りまくる」とか「構図も多岐に渡りまくって選び方がわかんない」とか。

　その中で、今回の「はんぺんをふたつ描く」講座で伝えたいことを絞った。ずばり、「手前にはんぺんがあると奥のはんぺんが見えない」ということだ。

　「手前にはんぺんがあると奥のはんぺんが見えない」
　真理だ。もんくのつけようもない。

　りゆうを説明しよう。我々の住むこの世界は「幅/奥行き/高さ」の3次元で出来ている。いっぽう、画面上の絵(とそもそもおれたちの網膜)は「縦/横」の2次元だ。次元がひとつ減っている。
　この世界のものを絵に描こうとすると、座標(0,0,0)にある点と座標(0,0,1)にある点が、どちらも(0,0)になってしまう……重なってしまうのだ！

　手前にはんぺんがあると奥のはんぺんが見えない。ふたつはたしかに奥行きの違う別の位置にあるはんぺんだが、絵に描こうとすると同じ横位置と高さになってしまうのだ。同一の点にふたつのものは描けない。結果、手前にあるものしか見えず、奥のものが隠れるのだ。

　はんぺんの全てが隠れずに、一部分が隠れ、一部分が見えるということもある。

　このはんぺんズも奥のはんぺんが隠れているのだ。

　このはんぺんズもまあそうなんだけど、これはさらに「はんぺんが相互作用で変形する」の要素が入ってくるので今回は割愛します。

　こういう「独立2はんぺん」の描き方について今日は書いていこう。

　ところで人間の目は、モノが多少隠れていても空白を補完して全貌をなんか見れる機能が備わっている。ご存知でしたか？

　この奥のはんぺん、線の一部分が見えていないわけだが、

　こんなふうに隠れている部分をなんとなく補完して見ているわけだ。

　……これが便利でもあり厄介でもある。
　「まあ一部しか見えてないし……いいか！」といって

　杜撰な形のはんぺんを描くと、

　杜撰な形のはんぺんが補間されて見えてしまうのだ……！

　はんぺんか？ 本当に？ とけちゃったチーズかもしれない。

　つまり、奥にはるはんぺんも、本当にはんぺんなんだと説得力を持たせるためには、はんぺん然としたはんぺんを描かねばならない。

　はんぺ～ん！

　だが正直……これが難しいのだ……。

　「一部分を隠しても補間されて見える」とはいうが、「一部分隠しながら補間しつつ描ける」かといったら、これは！ めちゃくちゃ！ 難しい！！ 精神に悪い！！

　こうなる！

　となると、どうすれば奥のはんぺんをはんぺん然としたはんぺんに描けるのか？ 人類に為すすべはないのか？
　私が使える方法は2つある。順に紹介しよう。

①　描いてから消す

　まず、奥のはんぺんを描く。

　別のレイヤーに手前のはんぺんを描く。

　任意の方法(※)で奥のはんぺんの一部を消す。

　ヤッター！！ 描けました。デジタルでの作業ならば、かなり簡易な方法だ。

　(※消す方法として、消しゴムツールで線を消す・マスク機能を使って非表示にする・もう一枚レイヤーを作って白で塗りつぶすなどがあります)

②　下書きして描く

　まず、奥のはんぺんを描く。

　手前のはんぺんも描く。(どっちが手前なのかゴチャゴチャになったら線を適宜消そう)

　別のレイヤーでもう一度なぞって描く。

　ヤッター！！ 描けました。これはアナログでも使える方法だ。

　以上だ。

　レイヤーをなんまいも使うだなんて……はんぺん1つに比べ、はんぺん2つの絵がハチャハチャに難しいということが理解できただろうか。
　といっても今回伝えられたのは、先述のとおりこの「独立したはんぺんが2つある」絵までなので、さらにもっと難しい道のりが待っているわけだが……。それを下書き無しで書けるのは岸辺露伴クラスの画力おばけだけだよ！ 下書きもマスクもなんでも使うからなおれは！ 

　独立2はんぺん絵が活躍している例を挙げて終わろうと思います。

　手で顔が隠れている絵だ。顔を全部描いてから、手を別レイヤーに描いて、隠れる部分の顔を消しています。
　つまり、手をはんぺん、顔をはんぺんとすれば、はんぺんがはんぺんに隠れている絵と同じことですね。

　同じです。
　役に立ちましたね！ ぜひご活用ください。