乃木坂丸の舵
「飛鳥ちゃんが卒業したら私らどうなるんだろうね」
飛鳥ちゃん推しと飲む時、口癖のようによくそんな話をしていた。乃木坂のことはずっと好きだろうけど、あまり追わなくなるのかな、ライブには時々行きたいよね。みたいな。
同時に私は、やまのミーグリどうしよう...とよく相談していた。飛鳥ちゃんで始めた乃木オタ人生、飛鳥ちゃんで終えるとばかり思っていたから。ただ、〝飛鳥さんが卒業したからファンが減る〟残されたメンバーが恐れているのはそれだと思うよと言われ、有難いことに飛鳥ちゃんを好いていることまでやまに覚えてもらえた私は、ずっと頭を悩ませていた。
そして飛鳥ちゃんが卒業した今、私は完全に宙に浮いていた。
選抜発表は何となく気になって、久しぶりに乃木坂工事中をリアタイしてみた。くぼしたWセンターだと悟った瞬間は鳥肌がたった。1.2期生が全員卒業して、完全に新体制となった最初のシングルというタイミングで、満を持してこの2人にセンターを託せる乃木坂46、強い。圧倒的に強い。推しが卒業してもなお、まだワクワクさせてくれる乃木坂に安堵した。
自分でも驚くほどフラットな気持ちで選抜発表を見ていると、泣き腫らした顔と声で「乃木坂を背負っていく」と口にするやまに、突然ものすごく胸を締め付けられた。
選抜発表が終わると同時にブログが更新された。
26thでセンターに選ばれた時と同じだ。
それを読んで、背筋が伸びた。ハッとした。
夜な夜な、過去のツイートや、ミーグリレポを見返していた。
──26th期間が終わる時、「色んなものを背負ってたと思うけど」と私が一方的に語っていると、画面の向こうで不意に拭われた涙。
──私が飛鳥ちゃん推しであることをやまが覚えていると分かり、それを知るやまに私の言葉はどう届くのだろうかと不安になっていた頃、さらっとくれた「味方だと思ってる」の一言。
──飛鳥ちゃん卒業時に"やまにとっての飛鳥ちゃん"を尋ねた時、「でも、」と最後にポロッと、だけどはっきりと口にしてくれた覚悟。
贅沢なくらい、色んな感情を伝えてくれていたことに気が付いた。やまの生き様に力をもらっていた記憶が、走馬灯のように蘇ってきた。飛鳥ちゃんの卒業で、先が見えなくなるどころか、過去も見失っていた自分が、馬鹿で愚かで情けなくて涙が止まらない。
「前に立って、飛んでくる矢を受け止めながら」
32ndセンターを受けて彼女はそう口にしたが、26thで初センターに選ばれた時、今当時を振り返って「こんなにも沢山の方の想いを背負っているんだと、自分を追い込んだ時期でもありました。一つも失敗は許されないと、闘いぶつかりまた立ち上がる毎日でした」と綴る日々の中で、同じようなことを口にしている。
不意に褒められると、愛を伝えられると、ポロポロと涙をこぼす彼女。思わず心配してしまいそうになるくらい、ひたむきで、頑張り屋さんな彼女。前を向いて、気丈に振舞って、笑顔を見せて。決して強いわけではない彼女は、夢のために、メンバーのために、グループのために、ずっと強く在ろうとしてきた。
山下美月だから、乃木坂46にとって大事な"新体制の幕開け"を二度も任されたのだと、自信を持って言える。
何も迷うことはなかった。
〝やまがやりたいことを、やりたいようにやってほしい。
私はそれに付いて行く。〟
ずっと自分でそう言ってたじゃないか。
32枚目、よろしくお願いします。
飛鳥ちゃん、山下丸の目バキ船長は、乃木坂丸の舵を取ろうとしてるよ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?