【連載】食べ合わせの幸福論Vol.6 何時何分何秒何曜日 地球が何回まわった時?の即席紅茶名糖檸檬茶

 砂場のわたしより年下の男児がいった。ああ、言ったさ。いまだに覚えている。このフレーズ。

 毒いちごには蜘蛛が巣食う。花の蜜を吸う。だって、コンビニなんかなかったし! 蟻がたかった、湿気った砂糖を水で溶かして舐めるくらい、昭和のわたしはいじきたない。おしろいで、顔を白くした。あの種がいじらしい。

 前後の記憶はまるでない。手を、引かれて行ったのだ。団地に。

 するとそこには、紅茶の粉末を溶かした水。即席紅茶名糖檸檬茶。青色の炭酸ではない。団地の、しらない部屋。足が覚えている。まあハイカラだわね。と。わたしは出されたその水を飲みながら、浮かべられるべきソーダフロート。喫茶店で飲んだ、あの、ソーダーフロート。ストローで飲み干す、最後の乳製品。青か緑か聞かれる、あのソーダーフロートが、入道雲のようだと、少し思った。

 炭酸ではなく、お茶。それも、紅茶。思い出すとずいぶんな紅さだ。

 だと、知ったわたしは、なんだか、大人の仲間入りをしたようで、今思えば、檸檬なんかじゃなくって、レモングラスで、わかりやすく、わたしはレモンよと、それらしい顔をした、あの粉末のレモンティーが、背伸びして、早く早くと、大人になりたかった自分のようで、水にとかさずに、小さなスプーンでざりざりほおばって、ウォッカを飲んで、ティースプーンは、流しに捨てた。

 銀のティースプーンに乗った檸檬粉末の紅茶の味の話でした。あの場所はいまもあそこにある。多めの塩辛さを纏いながら。


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