骨折日記

2014年1月4日、わたしは骨折した。

ちょっとした階段の段差につまずき、転んだのだが、着地がいけなかった。たいしたことはないよ、というわりには足が痛かった。これまで経験したことのないような痛みである。これは折れたな、と納得できる痛みであった。家人2人と友だちが家まで連れて行ってくれた。三軒茶屋の駅から家が遠かった。痛みはテンションをあげるものである。わけのわからないメールや電話を人にした形跡があったが内容など覚えていない。明け方、高熱が出たようだった。見ると、左足は倍くらいに腫れていた。救急車をよぼうか迷ったが、まずは、「東京消防庁救急相談センター」に連絡してみるべきだとTwitterで助言されたのでしたがった。電話口に出た女性職員が「怪我されたのは足だけですか? 頭は打ってない?」「怪我されたご本人ですか?」「意識はありますか?」「年齢は?」と訊かれ答えると、「救急病院へ行っても、長い時間待たされますよ。それに正月で休みなので痛み止めもらえるくらいだと思います」と、冷静に伝えられた。

我慢しよう。明日にはいつも通っている接骨医院も開く。

翌日、森進一に声が似ているY先生に往診に来てもらい、みてもらったところ、やはり骨折だろうとの診断。接骨医院ではレントゲンが撮れないので近くの整形外科に紹介状を書いてもらった。Y先生は2階の自室から1階まで運んでもらい、松葉杖も貸してもらった。一日、100円である。いま、書き込んでいるこのnoteというものには投げ銭のシステムがある。この投稿は100円に設定した。入院治療費は合計で50万円くらいの出費になったと思うが、それをすべて投げ銭でまかなえるとは思わないが、せめて、松葉杖代の6000円くらいは投げ銭がきたらいいな、と期待している。60人の善人よ、我に松葉杖代を! 話がそれた。

外科の先生は谷川俊太郎によく似ていた。レントゲンを撮ると、ほがらかに「骨折、手術、即入院」の詩を暗唱した。嘘である。こちらが深刻にならないように気遣っているのがわかった。これは本当だ。「うちでは手術はできないので大学病院に紹介状を書いてあげるよ」すぐさま、自分の携帯を取り出し、電話をしてくれた。コール中に「ここの病院はいい病院だから」とウィンク。電話口の相手にてきぱきとわたしの症状を伝えた。漏れ聞えてくる話を総合すると、どうもベッドがあまっていないらしい。保留音。「こういうときに受け入れてくれないのはいい病院じゃないんだ」俊太郎は言った。「ああそう!やったあ!明日、ベッドがひとつ空く?」ガッツポーズ。「じゃあ、明日。11時ね。かわいらしいお嬢さんがうかがいますよ。嘘嘘。いや、本当!」と、謎のテンション。見た目は俊太郎だが、中身はものすごく素敵なみのもんたなのかもしれない。「骨折、入院、手術」の呪文は一瞬にして、わたしを深刻にさせてはいたが、なにやらうきうきとした医者の対応に希望がわいてきた。なんとかなるような気分にさせられる。

「明日、病院に行ったら入院で翌日、手術なんですよね? 今日はどのように過ごしたらいいでしょうか。食べていけないものとかありますか?」と訊くと、「うーん。」と悩み、意外な返答。

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