【連載】食べ合わせの幸福論Vol.2 朝マックでビール

 どうするどうする〜きみならどうする〜。いきなり、イラっとさせてしまってすみません。きょうも眠る前に1本書いてみようと思い、noteを開きました。

 高校生のときはマクドナルドでバイトしていました。早朝、まだ街が寝静まっているとき、制服に着替え、自転車で坂道を上りました。マックシェイクの機械を組み立てたりした記憶がありますが、いつも失敗していたような気もします。そういえば、『朝ごはんの空気を見つけにいく』は堀井和子の本のタイトルでしたね。きっと、堀井和子はこんな自堕落な朝ごはんは好まないであろう究極のジャンクフードのおでましです。

 中央線を降り、やたらに眩しい朝日はまるで夕日のようで、いまがいつなのかわからなくなったとき、徹夜でくたくたなのに神経が高ぶって眠れないとき、朝マックが恋しくなります。ソーセージエッグマフィンとハッシュポテトにはサッポロビールがよく似合います。このハッシュポテトとソーセージの塩味はビールを呑むためにできているんじゃないの? ハッピーセットなんて眠たいこというてないで、これからはハッピーアワーや。アルコールが呑める大人のマックができたら、きっと通ってしまうだろう。たしか、ドイツではアルコールも出してくれたような。銀たこが立ち飲みやってるんだからその路線も悪くないと思うけどどうだろう。ケンタッキーも検討していただきたいものだ。

 朝マックにおいて、自分内マストはソーセージ。どうしてもあのジャンクなソーセージだけは自作できない。いや、近いものは作れると思うが、手間ひま考えると1年に1回くらい食べたくなるかならないかのものに力を注ぎたくもない。エッグマフィンの自作なら簡単だ。ハッシュポテトだって、代わりはいくらでもあるもの。問題なのはソーセージだけだ。豚肉オンリーのむちむちとした食感と脂身のくどさとセージが効きすぎていたあの味はマクドナルドでしか味わえない。所詮、自作したとしてもこれじゃない感は出てしまうだろう。わたしが食べたいのはあくまでもマクドナルドのソーセージとマフィンなのだ(ちなみに今まで作った中でいちばん、マックのソーセージに近いと思ったレシピは堀井和子の『気ままな朝食の本』に載っていた腸詰めにしないソーセージの作り方だったりする)。なので、節約したいならソーセージマフィンとハッシュポテトを200円で買って、家で両面の目玉焼きを作りはさんで食べるというのも手だ。なんならハッシュポテトは冷凍のものを薄く油をひいたフライパンで両面かりかりに焼けばいい。

 前歯でマフィンとチーズとソーセージとたまごを切断するときって、くるみ割り人形のような形相になってる気がする。噛み切ったあとのイングリッシュマフィンとソーセージの抵抗。ぱさぱさのたまごの黄身が気管に入って咽せそうになりながら、ビールをごくりごくり。

 口の中が洗い流されると、ハッシュポテトが誘惑してくる。ハッシュポテトで酒を呑むというのはけらえいこのマンガ『あたしンち』のお父さんがやっていたものを真似したものだ。ハッシュポテトは、あの俵型のうすいやつじゃないと許さない。アンパンマンになりすましたりしないでいただきたい。いま、バーガーキングの小さいのがころころ入ったハッシュポテトがまずかった記憶があって、調べたのだがどうやら生産中止になり、ふつうに俵型のハッシュブランになっているようだ。よし、それでいい。朝バーキンは一度、食べて油っこすぎて胸焼けしたため二度と食べる気はしないのだけど。マクドナルドはそのぎりぎりのチキンレースを勝ち抜いてきているといえる。まあ、いわずもがな超ハイカロリーだけどね!

 ハッシュポテトにはケチャップもNG。ケチャップは全ての味をケチャップ味に変えてしまう危険と隣り合わせの赤いワル。気軽に手を出すもんじゃないね。火傷するよ。マクドナルドのフライドポテトの剣先でちょんちょんと突くぐらいならまだ許してくれるだろうが、ハッシュポテトにどっばーとかけたら最後、かりかり感もなにもかも大切な物は失ってしまう。胡椒もこのさい入らないよ。純粋な尖った塩味だけがあればいい。

 単調でありながら食感がいろいろで、噛み応えもある。それが朝マックで呑むことの楽しさと、ほんとうになんて自堕落な、悪いことをしてしまったんだ!と罪悪感に苛まれつつ、そのまま二日酔いで、16時まで寝ちゃえば、ダメ人間のできあがりである。無為に過ごすことの優雅さと後悔を思い知るにはこの組み合わせは最強である。資本主義最高! 量産型最高! ブロイラーラブ! 血中濃度も増して、死に近づく。いつもの軽い致命傷の朝。それは有頂天の歌のタイトルだった。

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