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私は、◯◯◯のヴァイオリニストで在りたい 4

前回、私自身が日本に帰国した後について主に触れておりました。
今回は、ただ演奏だけの音楽家じゃないあり方を考え始めるようになった経緯から、と思ったのですが、

日本での音楽家が苦労する事、海外で長きにわたって活動をした音楽家ほど日本での活動がむずかしいこと、などを書ききれてない事があると思うので、まずそちらから。


日本とイタリアにいた時の違い、空気が違うとでも言えば良いでしょうか、音楽をする際の環境、周りの人たちの対応、明らかな差を感じることがよくありました。

例えば、クレモナの街に住んでいた時、気晴らしにちょっと散歩に出ようものなら、楽器ケースを持つ人に道端で遭遇しておりましたし(弦楽器製作家や製作学校の学生などもクレモナには多くおります)、どこかの家から歌や、楽器の音色が聞こえてくる、とか。

懐かしい話、私が寮生活をしていたころ、広い施設だったこともあり、一部の部屋は練習用に使っていいと許可をもらっていたので、2階にあるその部屋でよく個人練習をしてました。
ですが、夏場はなかなか熱くて。
イタリアでは基本的に扇風機しかない、冷房があるところは珍しいくらいで、当然私がいた寮もそうでした。

窓を開け放して練習していたところだったのですが、バッハの無伴奏パルティータのとある楽章を弾き終えた時、なんと階下から拍手が聞こえてきました。


私がいた部屋の前にある通りは小道で、見た目は裏通りのようなところだったのですが、どうやら誰かがそこで足を止めて聞いてくださっていたようです。本当なら近所迷惑にもほどがあるだろ、という話なんでしょうが(笑)

ただ、これがもし日本ならこういかないよな、とも思いました。
そもそも音を外に漏らさないように、と考えることが普通だという感覚ってあると思うんです。

限られた場所で気楽に音は出せるかもしれません、例えば音楽学校や音楽大学の校内なら普通なことかもしれません。ですが、ごく普通の街中で、「音楽をする人が受け入れられている空気」、というそんな感覚、すくなくともイタリア クレモナにいるときはこれを常々感じることができました。(もちろん全ての人がそうであるとまでは言いませんが、大部分はそうだと私は思いました)

さて、海外から帰ってきたあと苦労する点について、これで一つ出たかと思います。

自分が行ってきた「音楽をしている」ということに対して「受け入れられてる感覚が日本では得にくい」というものです。

別段悪いことはしていないのですが、思い切り音楽を外の世界にも向けて発信する、というのが日本ではなんとなしにしづらいなと当時思いました。音を出すにもご近所迷惑を考えないと、とか、人様にご迷惑をかけてないか、とか、そちらに思考が持っていかれやすい。
イタリアにいたとき、窓を開け放して練習していても、むしろ「通りがかる誰か喜んでくれるかもしれないから」と思うくらいの気軽さで弾いていました。

自分のそのままを受け入れてくれる環境がそこにあったように思います。

そのようなこともありますから、海外で当たり前のように自身の音楽の話を他者とも簡単に共有ができた、そんな場所に何年も身をおけば置いておくほど、帰国した後の日本とのギャップを強く感じるようになってしまうのではないかとも感じます。

日本で電車などの公共機関をつかえば、楽器ケースを持っていることで冷たい視線で見られる。ひどいときは邪魔だと罵倒される。
実際そんな目にもあったことがありますが、ヨーロッパにいたときは、楽器ケースを背負ってるだけで「あなたはなんの楽器を弾いてるの?ヴァイオリン?」とキラキラした目線で見ず知らずの人から声をかけられることもありました。

(今となっては懐かしい学校の非常階段からの景色。憩いの場でした↓)

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人々の当たり前の文化として、「音楽をしている人を受け入れる寛容な環境」があること。
これを体験した人ほど、いや、してしまった人ほど、日本での音楽活動は苦難で溢れてることに気づかされるのではないかと思うのです。そして、落胆もするのではないでしょうか。

また、日本に長くいなかったことで、音楽家として名前を全く知られていない状態であることも多いでしょう。

たとえどんなに素晴らしいコンクールで賞を取ろうが、どんなに輝かしい音楽歴があろうとも、それらを謳い文句にし宣伝し、日本でそのまま集客に直接つながるかというと、決してそうではない。

海外で真面目に勉強し、成果を出し、現地で認められる、セオリーなクラシック音楽を奏する音楽家になれたからといって、それが日本でも成功するのにつながるというわけではないのです。

私たち演奏家が思う「素晴らしい音楽家」「価値ある音楽」は、日本に持ち帰ったとしても、そのままでは通用しないことも多いのだと。

日本で演奏活動するにあたっては、まずここに気付けるかどうかが大きいのではないかと、個人的には思うのです。

続きは、また次回。


今日のおまけは、昔の私の姿の写真と、最近撮影されたもので使わなかったものです。特に覗かなくてもなんの支障もないですが、応援がてらに見たい!という方だけどうぞご覧ください^^


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