褒めたところで

終鈴の、解放感に浮かれていた私を不意に襲ったのは、ガツンという鈍い音だった。
学校から数えて二つ目の、見通しの悪い曲がり目の、出会い頭での大激突。
相手はそう、石頭中の石頭を持つといわれる野生動物、五才児(推定)。
ガキなんか放し飼いにすんじゃねえ!
だが世間は無情にも、私よりソイツに肩入れするのだ。
何とかちゃん大丈夫!?
と絶叫の母親はじめ、近隣の民家とかからも、わらわらわらわら出てくる大人ども。
助け起こされてもまだ戸惑ってるガキンチョは、まだ茫然として、泣いてない。
幼きにすぎ、まだ心理さえ満足に生えてなかろうその生き物は、周囲の反応を得て初めて、どう反応するかを決めるのだ。
今なら間にあうかもしれん!
「偉いねえボク、泣かないんだね!」
褒めちぎった、まさにその瞬間、生き物はその顔を醜く歪め

騒音をまき散らしだしたのだった。
南無三。



#テーマは・えらい・でした

それでも地球は回っている