扉にバツ〔大枝岳志さんに提示させていただく三作〕


いつも通りに起きて、いつも通り朝の準備を始める。
独身女の日常もまた、突然のドラマ起きようもなく、実に平坦でつまらないのが現実。
テレビを消して玄関へ向かい、カカトのゴムがダメになってて、歩くとカンカンするピンヒールにわがおみ足を滑り込ませる。
近くにミスミニとかあったっけ。
カカト直しやめた店舗もあったよなー。
ああ、令和は独居女性にぜんぜん優しくない!
センスのカケラも感じない、変な青っぽいドアを閉め、外へ出る。
鍵を締めて顔を上げると、違和感。
ああこれ・・・

外を見る穴~今外にいるから、中から見られる(ワケがない、私ゃ独り暮らしだ)穴ってやつだ~のチョイ下に、三センチほどの×が、黒マジックで落書きされてたのだ。
黒いバッテン。
くっきりと。
同じ階の住人がやったのだろか?
底意地悪う!
でも消してる暇はない。
なんたって出勤前。
今月は既に二回遅刻してる。
三回遅刻で一欠勤扱い。
これだから昭和からある企業はああ!
むかつく。
帰ったら消さなきゃ。

帰宅すると、バッテンはなかった。
管理人さんが消してくれたのかな。
カカト直しの店もすぐ見つかったし。
世の中捨てたもんじゃないなー、って中に入ったら、


家財一式消えていた。



最近の泥棒は分業だそうだ。
泥棒に入る家を選ぶ役と、実際家財を攫ってく役。
なわけで私に残ったのは、直ったピンヒールと持ち歩いてたiPhoneだけ。
いいやつ買ったから20万軽く超えた・・・

ザマーミロ。

だれにともなく言ってから、私は20万超で電話した。
呼び出し音。
カチャリ。
つながった。

警察です。
事件ですか事故ですか。

初めて実感湧いてきて、私はガタガタ震え出した。



同一スタート/女性版/リアル↑



扉に×が書いてあった。
うちだけ。
理由はわかる。
近隣すべての扉に、同じものを書き込む。
ざっと30軒。
さあどうだ。
主を狙う四十人の盗賊が来ても、どれがうちだかわかるまい。
私はニカーブの下で得意満面である。


きっかけだけ同じ/シェーラザードの千夜一夜物語より、アリババと四十人の盗賊ワンシーン。賢い女中のエピソード↑



扉に×が書いてあった。
うちだけ。
理由はわかる。
近隣すべての扉に、同じものを書き込、もうと思ったのだけど・・・

隣の一軒だけにした。
うちのは消した。

翌朝、隣家のご一同は、全員惨殺死体でみつかった。
拷問のあともみられた。
あぶなかった。



きっかけだけ同じ/シェーラザードの千夜一夜物語より、アリババと四十人の盗賊ワンシーン。賢い女中のエピソード。穿ったやつ↑
(でもこれが、最善の策では?)



とまあ、いろいろ書きましたが、

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それでも地球は回っている