芍薬〔ほりべえさんに捧げる一作です〕

※ 花のことはぜんぜんわかってません。

  気になるところがあったら言ってね。



切る側だった今生を終え、気づけば私は花だった
芍薬。
牡丹に似て非なる。
花言葉は「恥じらい」、「慎ましさ」。
冬には地上部すべてを枯らし、根の状態で眠る。
一介の、草・・・

けれど香り高く、大きく花開く。
その故に・・・


華月、華月!

母の声が私を起こす。
この名~花名~で母が呼ぶときは、私がお稽古に遅れそうなときだ。
身支度もそこそこに、急いで急いで急いだので、(とりあえず)間に合った。


花器と
花材と
剣山


あらま、芍薬(わたし)だわ。

清楚なのに華やかなそれを見て気後れる。
これほどに、豊かに生きてるか?私。

鋏を手にする。

この子を一番輝かす置きは?
いえ。
この子が一番よろこぶ置きを。

私と花器と花卉。

今最初の呼吸を整えて、その花(こ)を手に取る。


ただ一度の生を悔いなく。


それは。

それはたぶん。

それは。



人も花もきっと同じなのだ。


それでも地球は回っている