托卵〔読み物100〕

夢鳥は魔族のベッドに卵を産み捨ててゆく。
相手は魔族だ。
ちゃんと育てる可能性は少ない。
放置したり、捨てたり、わざと割ったりするのもいる。
そして魔族はもう極端に少ない。
つごう夢鳥も、もうそんなに数いないのだ。
8億年生きてきて、初めて卵が来た。
びっくりしている間にも、卵は

温めて
温めて

と思念を送ってくる。
ちょっと放置してみる。

温めて
温めて

温めろ
温めるものだろう!

に変わり、やがてそれは

冷えるっ
冷めるっ
しぬ、しっ

思わず抱いた。
まあ、死なせても、よかったんだけど・・・

ここ一万年つきあってる銀色狼が横でクツクツ笑う。

冴子は殺さないよ
いがいと殺さない

いがいとってなによ

ああでも、昨今は、そうだねえ。

食事にいけないー
排泄にいけないー

どっちも必要ないくせに

銀色狼はまた笑い、私はその腕に包まれる。
ゆーんのいない世界で、

それでも私は生きている。


※ 魔女・津城冴子シリーズより、『夢鳥』断片


それでも地球は回っている