ミニの夏

ミニはかっこいい。

でもこの猛暑にエアコンなしのタイプのミニだと、間違いなく△ぬかなー。

この夏みたいに道がすいてたらいいんだけど。

あの夏は。


その日はすごいノロノロ渋滞。

ドライバーはほとんど丸一時間、ハンドルから手を放していた。

後部シートにあった、おもちゃみたいな小扇風機は十分経たないで止まった。

電池切れになったのだ。


もっと早く出るつもりだったのに。


ドライバーのため息。

はい、と挙手する私。

当時二十三才。


私が遅れました。

すみません。

寝たまま、夢の中で、待ち合わせ場所へ歩ってる夢を見てたもので。

電話が鳴って怒られるまで、私はすでに現着してると思っていたのです。


信じらんない!


と嘆いたのは、誘ってくれたメイクのお姉さん。

もう一人の女性は、名も顔も覚えていない。

それほどの昔…


木枠の入ったミニクーパー。

混雑の江ノ島路。

クラゲに刺された海水浴。

そして夢で行ったつもりという恐ろしい経験。

若き日の自分とミニの出会いでした。


ミニの所有者のドライバーさんは

メイクのお姉さんがすきだったみたい。

お姉さんは愛せるか試してたふうでした。

いまは、どこでどうされているのやら。

お姉さんは数年後、別の方と、堅実な結婚をしたそうです。


それでも地球は回っている