光と影〔高見純代さんに贈る一作です〕

花を活ける。
太陽の位置を想定すると、花の気持ちが見えてくる。
これ見よがしに咲き誇りたい子もいれば、そっと茎間から振り仰げればいい子もいる。
花でさえ、千差万別。
人は・・・もっと複雑怪奇かな。

私が正教授になった日に、葵さんと茜村さんと譲原さんが辞めていった。
せっかくの歳月、惜しくないですかって聞いたら、葵さん、言った。

惜しいわ。
頭から湯気出そう。
でも辞めるの。
理由は聞かなくてもおわかりでしょ?

譲原さんたちも大きく頷いていたっけ・・・

いつもこんなだ。
ふつうに日日を努力してきただけなのに、威張ってる、いい人ぶってるって言われる。
でもでもでもでもでも!
私は!!


お初にお目にかかる方もいらっしゃいますね。
初音亜由子です。
私の花は常に太陽を求めていますが、ぎら!ってみる必要はないんです。
その花ごとの見方があります。
たとえば石楠花は・・・ばらは・・・



亜由子はたじろがない。
当惑はする。
悲しむ。
でもたじろいで引いたりはしない。
入門したてのころ、彼女は花を抜かれ、踏みにじられたこともあった。
でも犯人さがしはしなかった。
彼女は傷つけられた花を真ん中に置いた、弔いの花装を形作った。
悼む と題をつけ、枯れゆく子たちを慰めた。
その時に決めたのだ。
私のあとは亜由子にしようと。
十年経ったいまの亜由子はあの頃の亜由子に成熟が加わった。
才気走っただけの子らが、どんなに嫉妬しようとも、亜由子はこのままゆくだろう。
苦労しなさい。
悲しみも知りなさい。
あなたの花はそれだけ豊かになる。
ただ・・・

そのことに溺れないでね。
輝けば輝くほど、その影は深く濃くなる。
次の十年の後に、あなたが活けるものを、私は楽しみにしているのよ?





そして再び十年が過ぎた。




私は紫雲に隠れるように、地上のあなたをそっとみている。
見守っている。

それでも地球は回っている