月の女神が夜を渡る〔うえぞう。さんに捧げる一作〕


月の女神が夜を渡る
冴え冴えと美しい横顔
一見冷たく見えるけれど
こころのなか
実は慈愛に満ちている

最初の月
睦月と呼ばれる彼女は
一年の
始まりを言祝ぎ
永楽を祈る

次の月
如月と呼ばれる彼女は
衣更着せよと呼びかける
まだまだ寒いよと

その次の月
弥生と呼ばれる彼女は
まだ早いけれど、と
笑む
花花が
ほころぶ準備のため

さらに次の月
卯月と呼ばれる彼女は
卯の花だけではない、
菜の花、桜と咲かせ続けて、皐月のころを待つ

皐月
早苗植え

水無月の雨で潤す

文月の便りは実の入り

葉月
弾むような音の調べ

そして長月がくる
月が美しいといわれるが
月(わたし)はいつも美しいのだ

神無月
神集い、
今年はどうだったと語らうとき
月(わたし)は豊かな実りと
それをもたらす勤勉について語る

それでもやがて霜月がくる
凍(こご)れるさみしさをそっと抱えつつ
新しい日々の到来を待つ

師走よ師走
たれを走らせる?
もしかしてそれは赤い衣の老人か
何かしら配るその人を見かけると
白い老人が新年の支度を始める
仲間六人と宝の船に乗る

翌年も
栄えよ十二の月よ
月(わたし)がそっと見守っている


そして閏(うるう)よ

そなたを疎外したつもりはない
だが疎外を感じたとしたなら
月(わたし)は素直に詫びよう
おまえたち全てが吾の分身のゆえに

      2023年1月26日(木)追記

それでも地球は回っている