宇宙ポスト

その星は、宇宙開拓をかなり推し進めていた。
国際宇宙ステーションやら、入植やら。
新天地で一旗揚げようという野心家にはうってつけ。
土着の生物を絶やしてとか、そういう方向に行きかけて、かろうじて振れ戻った。
ポストを作ろうじゃないか。
誰ともなく言い出した。
ふるさと星との交流を絶やさないためにも。
親、きょうだい、友人、恋人。
手紙でつながってれば、荒んだ気持ちにもなるまい…

国際会議で了承され、ポストは建設され続けた。
自星系、隣星系、そのまた隣、さらに隣…

半径三百万光年の広大な範囲にわたって万難を排してポストを敷設し終わった頃。 

人々ははたと気づいた。


ファクスもメールもラインもある。
郵便である必要はあるのか?




それから二千年。
使われないポストもあるけれど、たまに酔狂な人が投函する。
宇宙ハガキ。
宇宙封書。
宇宙エクスパック。
宇宙スマートパック…

細々と、郵便行政は続いている。


それでも地球は回っている