十二の月の物語~konekoさんに捧げる12篇~


一の月の物語

お正月
松とれて、ふっと息つくと成人の日
そういう期間に誕生日
ううん
忘れられてるほうがいいの
ケーキやプレゼント用意されて祝われるの嫌で
でも、祝日が動くようになって、気づかれることが多くなった
祝われる
祝われる
誕生日
機械的に

そんなの
つまらない


二の月の物語

鬼やらい
鬼は外
外は寒い
寒いと悲しい
悲しい心は鬼を宿し
鬼やらいでいきなり追い出される
ぐるぐる


三の月の物語

きれいな雛壇もいいけれど
鎧兜もかっこいい
女だって戦える
守られたい男もきっといる


四の月の物語

嘘でもいい
楽しい嘘なら
妻との仲はもう冷え切って、とか
妻とはいずれ別れる、とかの
型にはまった嘘はいや
絶対いや


五の月の物語

鯉のぼりが泳がなくなった空
こどもらはどこに消えたのか
歓声を上げて走り回った
そんな生き物は幻想なのか
ああ
気づけば私たちの耳には
小さな小さな切り込みが
男は右
女は左
いつ誰に去勢されたのだろう?


六の月の物語

雨よ雨よ
しとどに降り続け
私は傘を一本手に持ち
一本は差して迎えにゆく
あなたに差し掛けると
あなたが持ち
私に差し掛けなおしてくれる
結局もう一本は開かれることもなく
私たちは連れ立って帰るのだ


七の月の物語

短冊に書こうあなたの名前
歳月が遠くに押しやってしまう前に
かつては私の隣に在った
あなたの名すら忘れそうだけど
まだ書ける
忘れてない
私はあなたを忘れてはいない


八の月の物語

灼熱の恋は真夏の太陽に似て
じりじりと私を焼き焦がす
けれどぺりぺりと古い皮みたいに
剥がれて落ちてしまえば終わりだ
夏の恋は

ひたすらに残酷だ


九の月の物語

秋色の風が吹く
ゆっくりと
確実に
さやさやとさめてゆく恋心
実りはこの胸の奥にある
出会えただけで幸せ?
思い出だけを友として?
私も静かに退場する


十の月の物語

神々が会合ゆえ
巷にいま
神はいない
願いのある者は出雲に出向き
直接
神々に
願いを伝えねばならぬ
なさぬ仲の母の快癒を東国から
はるばる祈りにきた乙女
出雲にたどりつくこともなく
とある宿場でその生を終えたという


十一の月の物語

霜降り始める晩秋に
雪国で
雪の姿の虫がとぶ
名は雪虫とついてるけど
分類はアブラムシの仲間なんだぜ
ああ!ロマンなきマイ彼氏
理系の脳の前にはめっちゃ
愛は無力


十二の月の物語

暖冬で
なかなか降らない雪ひらを
そりの上から撒きながら
鈴鳴らし
高く笑い
ふくよかな人が夜を渡る
よい子に報いを
悪い子にも報いを
いつもいつでも
いつまでも
人は夢に生きている


それでも地球は回っている