仕事〔読み物100〕

浅水(あさみず)の家から言われて、安達様のお宅にお仕事に来た。
着いたのは夜だったので、背後の森と夜空に溶け込んでしまって、建物の全体はよくわからなかったけど、とにもかくにも大きな家だということだけはよくわかった。

浅水イクさんですね?

はい。
遅くなって申し訳ありません。

一礼する。
すごい玄関ホール。
天井も高い。
私の視線気づいたのだろう。
当主は笑って言った。

ちょっと天井が高めなだけで、ありきたりの三階建てですよ。
私どもは二階に暮らしています。

ではお子様がたが三階に・・・

いえ、こどもは私たちと一緒に二階に。
あなたにお願いしたいのは・・・



上がっても上がっても階段。
これが三階っていうなら、M2、M3、M4、M5、・・・M35くらいあるのか、ここ?
あー。
足が棒。
こんなに上にお住まいのおばあさまって下降りてくることあるの?



降りてきてほしくないから・・・こんなに遠いのかも?



そう思ったら足が止まった。
もう上がる気になれなくなった。
心なしか上方からは、かすかな唸り声が聞こえる。
そしてそれは間違いなく、

近づいてきている!

降りよう!
ここにいてはいけない!!

そう思った瞬間に、なにかが私に襲




新しい浅水来たんだ?


ああ。


これでまたしばらくは持つはずだ。


因果なうちだねえ。
浅水もうちも。
いつまで続くの安達が原。


婆さまが滅びるまでだろう。
後、二代か三代か。

僕の代では終わらないんだね。

終わらんだろうな。



安達の家は閉じ込める役割。
浅水の家は餌。
鬼守の家系の宿命。
そもそも浅水の姓は、

朝は見られない

の意味だ。
浅水イク。
朝見ず逝く。
名は体を表している。


それでも地球は回っている