昼下がり/SABORI
人が日陰で涼んでいる。
大きな木の、葉擦れの下。
木漏れ日があっても、彼のいる場所に強く差し込むことはない。
かれは汗を拭う。
ときにそのハンカチを絞るほど、かれは汗をかいている。
猛夏。
猛暑。
かれは涼んでいる。
一匹のいも虫がその木を登っていく。
枝にかかり、とびきりおいしそうな一枚の葉に陣を定める。
あむあむと、葉を食んでゆくいも虫。
しゃくしゃくと、葉が削れてゆく。
大きく欠けてゆく葉。
光が地に落ちる。
その直前、
ん?
となったかれが目を上げて、
ひと束の光をざくりと目に浴びる。
てえっ!
まるで矢でも刺さったかように、うめいてかれは立つ。
午後の仕事はまんま残っている。
それでも地球は回っている