ミッション・インポッシブル

私はかつて私自身を完全に、自宅から閉め出したことがあります。

スマホだけは持っていたのですね汗。

この時のオチは

娘が家にいた

でしたが、いまはもう彼女は他所で独居しています。
旦那は長期入院中。
家にいるのは私だけ。
で。
またやってしまった。
締め出し。
鍵は全部家の中です。




生前、義母が言っていた
近所の人に窓から入って貰って開けて貰ったと



その窓はいま雨戸閉めてあります。
戸締まりはかっちり。
かっちりです。

さあ困った・・・




ふと思い出す
洗濯物を取り込んだとき、二階のベランダは鍵締めなかった記憶・・・



でも二階。
一階の小庇すら、私の手は届きません。

さあどうする・・・





でも登るしかないじゃん




そうなんです。
入院夫の秘密主義のせいで夫の口座は解錠不能。(今も!)
鍵屋さんに頼る予算はありません。
そして鍵屋さんに連絡するすべもない・・・スマホも家の中だから!
シリンダーさえ回ればいいんだからと、鍵穴に小枝突っ込んだら折れました。
折れてから気づいた。
折れ先の小枝が中に残ったら、鍵が手に入っても開けられない・・・





でもいまはまず入ること!
私は登ることに決めた




小庭にあったのは古タイヤの山。
旦那の車の古い足回りです。
私の首の高さくらいまでありますが、まずそこに上がれません。
が、自転車を足場にすることを思いつきました。

狭い小庭が幸いして、自転車は、古タイヤたちと隣家の壁とにがしっと挟み込まれました。
おニューの履き物(サンダル)で上がりかけましたが、素足のほうがホールドがいいかも、と思い直し、脱いで荷台、サドル、

まだ高さが足りない、

ハンドル中央部に上がりました。
古タイヤに手をついて、にじり上がると、かなり高くはなりましたが、あと四十センチくらい高いと、窓格子に手がかけられる・・・
つまりそれだけ足りないのです。





いったん下りて、高さを補えるものをさがす



植木鉢、は高さ十センチくらい、小さい。
素焼きの植木鉢は三十センチくらいあるけど、まずもって持ち上がらないだろうとおもったし、植わってる連中を追い出したくもない。
あとはスコップ(雪かきできる大きいやつ)、ビールケース・・・

ビールケース!!





古タイヤたちの上に置くと程よい上積み
横置きより縦置きだとさらに五センチ稼げる!
私はふたたび自転車に登った・・・




荷台。
サドル。
ハンドル中央部。
古タイヤ上。
そして・・・

ビールケース上!!


見下ろすと、すごい高い!
小庇に手も届く。
廊下の窓の弱っちそうな細柵。
端は雨戸の戸袋に、いい加減に付いてます。
奥はベランダで、そこの柵は太くて強そう、でも老朽化。
サビも多数(泣)。
でもま、とりあえずイメージしてみる・・・

細柵を手がかりに、ぐいとからだを上方に引き上げる。
小庇に上がって、ベランダ柵を乗り越えて・・・

転がり込む!


だいたいの案を決めて、体重移動を開始しました。
古いビールケース、悲鳴を上げながら、何とか私を支えてくれてます。
廊下窓外の、細い、頼りない柵も、がんばって私を支えてくれてます。
ふと気づきました。
よくそこから、天気を確かめてきたから、廊下の窓も開くのでは?
試しに指腹で硝子を横に引くと、

するする・・・

開くではないですか!!!




ベランダの太柵は高さもあって、乗り越えるのは冒険すぎるかもしれない


だから廊下に・・・転がり込めれば・・・


ビールケースを蹴り、
小庇に乗り、
ベランダ柵に体重を預けつつ、


細柵を




越えた・・・






転がり込めたのです!






全身室内に入ってから、ガクガク膝が震えました。

途中で震えたら、絶対出来なかった。
間一髪でした。



階下に下りて。
解錠して。
鍵が効くかも確認して。

大丈夫。
私は何とかやり遂げたのでした。






エピローグ



お片付け。
自転車を、挟まりから外して表に出し、山積み古タイヤからビールケースを下ろそうとしたら、これが取れないのです!
よくみると、外壁を覆ってる金属?に、横筋の凹みが二十センチおきくらいにあって、その一列にビールケース、ビールケースの上端が、うまくはまっていたのでした。
そのおかげで安定してたんだと、その時あらためて気づきました。




後で娘に報告したら


危なすぎる!
本当に気をつけてね!!


とがっつり怒られました。





冒険譚は以上です。
ミッション・コンプリート。
アンド生還。






追記

下記は不運な女子大生が、助けは来ないと覚悟して、一人、崖を登る一人芝居台本ですが、この日の私の登り方、主人公とそっくしでした。
作者って作品に似るのかしら?


















#創作大賞2024
#エッセイ部門

それでも地球は回っている