うま


兄も姉もきれいだ

俺はたてがみもざんばらで
両目はどよんとくもってる
ぶちなのもかっこわりい
脚も短い
でも

たけなかさまは俺を買った

おまえは見かけに寄らず
はや駆けが得意だ
義経の馬のように急坂もなんのその
おまえは私の自慢だよ

って

だから俺は懸命に走る
いくさ場も
荒れ野も


半兵衛

おまえは私の軍師であり、織田様のれっきとした家臣でもある
その立場のものは見目も由緒も正しい馬に乗らねば格好がつかぬぞ


名馬を持てば名馬を惜しむ。
その馬を失いたくないあまりに勝機を失ってしまうこともある。
しかし乗っているのが駄馬であれば、勝機にすぐさま馬を捨て、戦場を駆け回ることができる。
仮にその馬に槍されても、逃げ出されてしまっても、駄馬などいくらでも手に入る。
そう思えるからこそ勝機を損なうことなく、好敵に瞬時に槍刀を構えてゆくことができるのです。
もし名馬に乗っていたらどうでしょうか。
もし場所を考えず馬を乗り捨てたら、従者は馬に追いつけるだろうか?とか
馬を敵に盗られないだろうか?とか
余計なことを考えてしまい、好機に瞬時の判断が鈍ってしまうかもしれぬではありませぬか。
その故でございます。


仲間から伝え聞いた。
そうだったのか。
乗り捨てやすいように俺を。
ちょっとがっかりしたけど、まあ俺なんざそんなもんだ。
これからも、しっかり働こう。


うまよ。
一つだけ言っておく。
おまえはなりは貧相だ。
おかげでうまぬすびとの手にもかからぬ
わたしはそのことに感謝しておるのだが
それではだめか。


!!


俺はたけなかさまのうま
はや駆けが得意だ
義経の馬のように急坂もなんのその
そして俺は


半兵衛様がだいすきだ


それでも地球は回っている