100の美しいものを記述する試み52兼・新6
ケーキと演出~失われてゆくさりげなさ~
note内女性で、当時いちばん仲良い感じだった某かたが、実はケーキが泣くほどお嫌いだったそうで
(↑いろいろあって、今は全く交流ないです。為念)
その話を読んでたら、ふと撮影現場のケーキネタのことを思い出したのだった。
私は間接職だから、実際に現場に関わることは滅多にない。
その代わり、現場で働くスタッフの方と懇意にしているので、思わぬ話が聞けたりもあるのだ。
mさんというスタッフさんは私のように勝手にリタイヤしたりしなかったので、今も現場仕事を続けていらっしゃる。
『関係者から聞いたどうでもいい話』シリーズの1で、若き日のヒロスエの悩みを聞いたのも彼女だ。
その彼女がある日、ものすごく怪訝な顔で私の仕事場に来たことがあった。
どしたの?
やー。
今ね、昼メロなんだけどさー。
ヒロインが、相談事で友人宅を訪のうシーンで、手みやげに、ケーキを持ってくるのだという。
キエモノ(食物。食べたら無くなるから)の用意をした助監督の女の子が、ケーキを、皿に二つずつ置いたのだという。
プチケーキじゃないの。
シフォンみたいなしっかりしたやつ。
それが二個。
私話が頭入らなくなっちゃってさー。
わかる。
このシーン、重要は“相談事”であってケーキではない。
皿に一個、自然に置いてあればいいのだ。
そして紅茶。
なんとなれば、紅茶だけだってかまわないのだ。
それなのに、なぜだかケーキ二個。
若いキャピキャピが笑い転げながらお茶するシーンではないのだ。
何故二つなんだろう・・・
こうしたことの察しが、徐々に徐々に失われてゆく時代だったのだと今ならわかる。
オーソドックスな演出が、廃ってゆく時代のはしりだったかもしれない。
で、その助監督は今、ちゃんと独り立ちできたのだろうか?
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