3月16日〔コラム365・抜け日らしき。お恥ずかしき〕

食の殺人


食べ物の恨み殺人事件ともいわれる「片岡仁左衛門一家殺害事件」の裏には梨園のしきたりと戦後の飢餓があったと思う。
飢餓は肉体も損するが、当然精神にも影響する。
具体的には、

頭がボーっとする(意識障害)←低血糖により脳のエネルギー源となる糖質が不足するため

けいれんや幻覚妄想←神経の働きに必要な、ビタミンB群の欠乏によるもの

意識障害、イライラ←脱水や水中毒などによって電解質のバランスが崩れるせい

等々。

健常者でも極度の飢餓状態により、情動不安定や幻覚妄想など精神症状を呈することがわかっているそうで…

食べ物の恨み殺人。
それは激怒憤怒の殺人だけだったのでしょうか。
栄養不足も大きく影響していたのでしょうか。



3月16日 片岡仁左衛門一家殺害事件



1946年。
東京の自宅で夫人、四男、女中(家政婦)二人とともに、住み込みの門人~被害家政婦の一人の兄にして座付き作家~により、薪割り用の斧で惨殺された事件だが、戦後の混乱、配給の詐取による低栄養、作家としてのプライドを叩かれる上に作男として蔑まれる日常。
暴発した気持ちは理解できる。

本人は立役、女形の双方をつとめ、立役では豪胆な芸風で知られた方だそうで、その反面、自身の理知的な面持ち等、どうしても冷たさや暗さが表情に出る感があったよう。
怜悧な立役から面罵され続け、かつ、食事も満足にもらえない、作男扱いの座付き作家…
これは凄惨だと思う。
でも四男はまだ二才だった…

それでも地球は回っている