愛。表裏一体2

1のサイドの裏で、今泉もまた帰途を急いでいます。



タフガイ〔二次創作弱虫ペダル。今泉目線〕

一便早いのなら、今日中に帰宅できる。
急ぎたい。
今日帰ってあげられなければ、俺に夫の資格はない。
空席待ちカウンターで貰った番号は6。
乗れそうで乗れなさそうな数字だ。
キャンセルが出て3までなくなった。
4、5、6。
あと三席。
さらに一席あいて、4がなくなった。
後二席だ。
いらいらしてる俺を、5番の男が
ちょっと面白そうに見ている。
まだ見ている。
ちょっとむかついて、

あんたねえ!

声を荒げると、コーヒーに誘われた。

白人で、ちょっとごつい感じだ。
底まで透けそうなアメリカンを注文した。
俺は普通にブレンド。
空港のカフェにしてはうまいのだ、ここは。
でも今日は気がせいているので、味がちゃんとわからない。

この瞬間にも、俺は愛しいあの人を思う。
過去にとらわれている日は、俺もこどもたちも何の楔にもならない。
でも抱きしめることができれば、“現在”に引き戻すことだけはできる。
俺はそれがしたいだけなのだ。

女か?

タフガイ~そうな男~が、そっと聞いてきた。

女っていうか…妻だ。

そんなに急いで帰りたいのか。

惚れ込んでるからな。

こどもはいないのか。

いる…三人だ。

男はヒュウ!と口笛を吹いた。

精がでるな。
でもそんな古女房でも心配なのか。

そういう聞き方か。
心配だとも。

特別な女なんだ。

俺たちを封じ込め、足止めしたあのコンビネーション。
タイミングさえ合えば、ちゃんと先行逃げ切りできる脚力。
田所さん引き継いだ酸素音速。
手嶋さんに逆らってでも後輩を拾いにいった男意気。
当の手嶋さん自身を、身を挺して拾いに行った魂。
それだけの男が今、俺の妻だ。
愛してくれて、睦んでくれて、俺のこどもも産んでくれたんだ。
愛さなかったら罰が当たる!!

戻ったら、空席が一つ出来ていた。

Congratulations.

5番に言うと、タフガイは少し考えてから、

Chenge.

俺の6番と取り替えた。

おまえのほうが急ぎな気がする。

You…

言葉につまったが、ありがたく好意は受けることにした。

Thank you very much!

手続きカウンターに走って行った。



でもって日本ついてから、にゅーすでそのひと見たんだよね。

おくさんころしてにげたひとだったんだよね。

おとおさんにチケットゆずったせいであとびんになってつかまりやすくなったんだよねえ。

おとおさんころされなくてよかったあ。

えみは既に半泣きだ。
もう二か月もたつのに。
そんなこどもらと俺を、にっこりと見守る妻。
たおやかな風情のあなた。


かろうじて911のうちに帰り着いた俺に、あなたは駆けてきてすがりついてくれた。
文代さんが俺に囁いた。

戻ってくれて良かった。
怯えたの。
かなり。

ありがとう。
見知らぬタフガイ。
あなたのおかげで妻を…俺は守れたようです。

それでも地球は回っている