おいしいお菓子と善と悪〔Mrs.chocolateさんへのお礼作です〕


とてもおいしいお菓子があります。
これはうれしいこと?

先生の問いかけに、こどもたちは声を揃えた。

うれしいこと!

でもそのお菓子のもとになる、小麦を作る農園の労働者が、誘拐されてきたこどもたちだとしたら?

ええー!?

こどもたちはざわざわした。
先生はかまわずたたみかける。

これはよくないこと?

よくないことー。

答える声の勢いは、目に見えて下がっているが、先生の問いかけはまだ続いた。

でもその子らは自宅で、じつの親に虐待されていたんだ。

ええー!?

それもよくないこと?

よくないことー。

ここはまあまあまとまった。

じゃあ誘拐犯たちは人助けしてるんだからいい人たちなのかな?

ちがーう!

じゃあ悪い人たちなの?

それはー・・・

こどもたちはついに黙ってしまった。
参観者たちもしーんとなっている。

先生、こどもらに、何を突きつけたいの?

って口の中でぶつぶつ言ってたら、あらやだ。
うちの優奈が手を上げた。
なに言うの・・・?


わたしは小麦のアレルギーがあるのでー、その農園で作られた小麦でできたお菓子は食べれません。
事情知ったらますます食べれないっていうかー、食べたくないです。
でもわたしいがいのこのクラスの子はー、みんなバカなので、絶対食べると思います。
おいしいおいしいって、おかわりもすると思いまーす!

私は青ざめたまま立っている。
頭の中でぐるぐる考える。
PTA、おりるか、優奈を転校させるか。
にしても何てこと。
ここ入学金高かったのに。
ママ友~だった人たち~の凝視をひたすら感じながら、私はただただひたすら、ひたすら、その場に立ち尽くしているのだった・・・

それでも地球は回っている