20年〔『受難』後譚〕

20年経った。
私ももう87だ。
死にかけて目が覚めた尚子さんと宏樹は、私の小さな日陰の家で子育てを終えた。
子もタワマンの怖さを知って、普通の高さの建物で暮らしている。
近いので、よくタワマンの人々をみる。
20年の歳月が、何のことはない、タワマンも老朽化させている。
高額所得者が多数住んでいるので、管理費を引き上げては、化粧直ししているが、地盤沈下、ひび割れ等、何もかもは直せない感じだ。
住民にもそれは言える。
高額所得者ともあろうものが老朽建築に住まうのが恥ずかしいらしく、昨今は島を買うブーム。
資産が尽きた人は出たり、又貸ししたり、空室、又貸しが出るとますます資産価値は下がる。
もう22階あたりでも、七千万台で買えるらしい・・・

ひさしぶりに車で前を通った。
公園にたむろっているのは老人ばかり。
こどもの声とかもない。
昔は美しかったろう男女。
引きつれ顔は美容整形の名残が老朽化したものだろう。
超高層でもマンションはマンション。
結局はニュータウン現象の繰り返しに終わった。
若い人には手が出ず、年降りたら老朽物件なんかには手を出さない。

うちはあのとき見限って、正解でしたね。

意地でも出なかった尚子さんがいうので、思わず笑ってしまった。


それでも地球は回っている