KUNIBIKI①〔応募作ですので、noteさん、妙な但し書きは絶対置かないでください〕

KUNIBIKI①

 20XX年の夏。
 アタシは編集会議に遅刻した。
「遅くなりました!」
 ドタバタと駆け込んだアタシを見る、先輩がたの冷たい視線。
 冷たい、というよりクール。
 クールそのもの。
 デスクが禁煙パイプを口にくわえたまま言った。
「マジ遅かったな。おかげで全員ゆっくりと、好きな担当が選べた。残りはこれだ」
 禁煙パイプで示されたホワイトボードには、『スモー』と『いけばな』しか残っていなかった。
 スモーといけばなあ? 
 きゅっ、きゅうきょくのせんたくっ。
 漢字で浮かばないほどテンパるけど、どっちかしかないとしたら、スモー、だ。
 いけばなだと、生活情報、家庭部だもん。
 下手すると一生、身の上相談とかの記事チェックになっちゃう。
「そう言うと思った。じゃ早速空港行ってくれ。士幌山部屋に外人新弟子が入る」
「は?」
 いきなり取材?
 まじありえない。

 個人所有のホババ~ホバーバイク~で空港まで飛ぶ。
 ファルルフからの直行便はもう着いてる。
 士幌山部屋はTOKIOタイムス社からかなり隔たるから、何としてもここで関係者と顔つなぎしときたい。
 幸いロビーで大男集団を発見、近づいたらドンピシャだった。
「TOKIOタイムスです! 新弟子君取材させてください!」
 言いながら、ぐるりとメンツを見渡す。
 大柄の男性たち。
 といってもブザマに太ったりしてるわけではなく、十分に鍛えられた、筋肉質の肉体の持ち主たちだ。
 年とってるけど、いちばんハンサムな大柄が、
「お世話さまです」
と頭を下げてくださった。
 (この方が士幌山親方?)
「八木沢さんは?」
「栄転でロシア行きました」
「それって栄転違うっしょー」
「こら、ハヤノテルっ」
 士幌山とおぼしき美形老大柄は、若いのを制し、傍らの、小さな黒人の男の子をアタシに紹介した。
「ファルルフから来たメサくんです。十一才。冬に十二になります」
「けっこうちっ…小柄ですね」
 ちっちゃいはさすがに失礼だろう。
 上品な顔立ちの、ゴツクない力士が柔和に笑って、
「僕去年、もっとちっちゃかったですよ」
「メサ、レディにご挨拶」
 老ハンサムが少年に促す。
「サダリホ」
「さ、さだりほ」
 現地語には現地語で返す。
 記者の基本。
 すると柔和がやわらかく、
「返す方はさだるふです」
 そなの?
「さだる…ふ…?」
 メサがにこっと笑った…

 帰宅したら母がエキサイトしてた。
「士幌山部屋へ行ったのおおっ!?」
「ママってスモーファンだったっけ?」 
「スモーなんかどうでもいーけど士幌山は好きっ。昔の四股名は『輝雄』。角界一のハンサムだったのよ? あー、会いたかったー」
 ぺ・ヨンジュンにも嵐にもハマらなかった、が自慢の母がキラキラしてる。
 言われてみればイケメンぶりハンパなかった。
 『輝雄』かぁ…

 遠い遠い士幌山部屋へ、来る日も来る日も通い続ける。
 特にスポーツ好きでもない、ましてスモーなんて、のアタシには、母に土産話が出来るコトいがい、何のメリットもない。
 土の匂い、汗の匂い。
 男たちのぶつかり合う音。
 神棚。
 鉄砲柱。
 土俵。
 お神酒。
 可愛がり。
 でも今のスモーはそれだけじゃない。
 人型ローダーに搭乗して戦う、マシンバトル部門と、肉体改造もクスリもやり放題の、肉体強化部門。
 二つの部門が増えた結果、今やスモーの代名詞たる本格は、完璧絶滅危惧種だ。
 本格の名門とうたわれる、この士幌山部屋でさえ、奥にはマシン相撲土俵があり、人型ローダーが七体ある。
 アタシの脳裏に母との、昨夜の会話が甦る。
「フツーのオジサンだったよ? 大きいだけで。でもフツーのオジサンにしてはめちゃめちゃイケメンだった。強化系の後遺症とか来てない感じ。これから崩れるのかな」
「崩れません! 士幌山が『輝雄』だった時代には、マシン系も強化系もなかったの! ついこの間まで相撲は本格だけだったの! アタシに言わせりゃ他の系統はみんな邪道よ邪道!」
 まくしたてる母の語調きつくて、思わず両耳押さえたっけ。
 ママの言い分もわかんないではないけど、今こうして見てたって、ハデるのはダンゼン強化系の稽古だ。
 こないだ『栄転違うっしょー』ってつっこんできた大男、ハヤノテル~漢字で書くと隼ノ輝だそうだ~の、盛り上がった肩とか太い腕とか、見るからに強そうでそそられる。
 それに比べてメサくんは、あまりにも、あまりにも小さい…
 新弟子なるのに身長制限とかないの?
「昔はね、キツイのがあったんです」
「あっ親方、おはようございます」
 近くでみるとますます…見応えのあるイケメンだ。
「身長が一ミリ足りないだけでも、力士になれなかった。どうしてもなりたいからって、頭にシリコン入れて、身長伸ばして合格したなんてやつもいたんですよ」
「へえ…」
「でも今はもう、ほとんどないも同然。ごく当たり前の健康診断だけといってもいい」
「スモーが三つに分かれて、好きな系統に進めるようになったことの恩恵ですよね」
 タッチライターでメモを取っている私のことばに、親方は「そうだね」とは答えない。
 同意したくない何かがある?
 ちょっと気になったけど、今日まとめたい記事のメインは士幌山親方の憂鬱ではなく、新外人力士の紹介だ。
「メサくんはどれ系に育てるんですか? こんなに小柄だと、本格は不利だと思いますが」
「だからっていきなりクスリ打つの? あいつみたいに?」
 隼ノ輝を指す。
 少し不機嫌の波動がある。
「おい。見た目ばっかり作ってないで技も覚えろ」
 隼ノ輝はへへっと笑っている。
「それは賛成できかねますけど、機械で戦うやつとか」
「マシンバトルかな?」
と唇を結び、
「それだと確かにデビューは早くなるが…。できればじっくり体を作らせたいね」
 体力テストをされていたメサが士幌山のところへとんできた。
「でびゅー早い、いい。メサ、あすでもリキシ、したい」
「あす?」
 親方おおいに苦笑して、
「どうしようかねキシロさん」
「ど、どうって言われましても…」
 答えようがなかった。

 帰り道は足が重かった。
 外人新弟子ったって、そんなの今じゃゴロゴロいる。
 黒人力士も少ないけどいる…本格にいないだけだ。
 だから士幌山親方はメサを、黒人初の本格力士にしたいのかもしれないけど、メサはそんなこと望んでない気がする。
 一日も早くデビューしたいメサ。
 取材の芯がつくれない。
 あすは初日だ。
 国技館、行ってみるしかないか…

 初日から毎日通ううちに、どんより感はいや増してゆく。
 場所中にもかかわらず、閑散とした館内。
 取組もかったるい。
 睨み合うのに水さされる。
 手をつきかけて、やめる。
 いったい何を待ってる?
 わからない、わからない…
 その点強化系は…

 第二国技館へ移動する。
 満員御礼の垂れ幕。
 どっさりの観衆。
 応援は怒号のようだ。
「ハヤノテル! ハヤノテル!」
「ツシマシュウ!」
 あの隼ノ輝がちょうど土俵上にいた。
 津嶋海部屋のホープ、津嶋秀が相手だ。
 傍で見た隼ノ輝はものすごい肉体だったけど、津嶋秀もものすごい。
 ぶつかり合う肉体と肉体。
 しかもそれが変形する。
 がっぷり四つに組んでいるのに、津嶋秀の背からは今、二本の小腕がにゅううっと出てきて、隼ノ輝の首を締め付け始めた!
「ぐふっ」
 落とされかけ、ふっと力が抜けたところで、足を払われ、隼ノ輝は膝をついた…
 行司の軍配がさっと上がる。
「津嶋秀うううううっ」
 どっと会場が湧く。
 引き上げる隼ノ輝が、士幌山親方に伴われ、アタシの脇を通ってゆく。
「シュンテル惜しかったね」
 通ってるうちに呼びならわした呼び方で激励したけど、シュンテルは怒りのこもった目でアタシを見返した。
「全然すよ。うちの部屋、バイオ改造御法度だから、あーゆー戦法で来られるとアウトっす」
「そういう問題じゃないって常々言ってるだろう」
 親方が振り向いてシュンテルに厳しく言う。
「下半身を強くして、技を」
「そんなの本格のやつに言ってくださいよ。俺らには俺らの戦い方があるんだ。親方の時代とは違うんすよっ」
 シュンテルは独りで、支度部屋に戻ってしまった。
 親方はことばもなく、シュンテルの去った方を見送っている。
 そこへ「わあっ」っと上がる歓声。
 『第ニ土俵』での取組が始まったのだ。

 第ニ土俵はマシンバトル相撲の専用土俵だ。
 こちらにも満員御礼が出ている。
 人型ローダーを装着し、立ち合いを待つ二人のカ士。
 一人は空港でアタシにファルルフの習俗教えてくれた、あまりガタイのよくないあのコだ。
「丸太山です。去年の新弟子で、新人賞取ってます」
「八卦良い、残った!」
 行司が宣するや否や、二台がガッと動き出す。
 組んず解れつぶつかりあって、やっと組み合い、押し合って、やがてタヤマが相手をマシンごと投げた…
「丸太山~!」
 行事が軍配を掲げると、既に湧きっぱなしの場内がさらにどっと湧く。
 そんな客たちの背中を見ていると、相撲シロウトの私にも、熱気がばりばり伝わってくる。
 でも親方は苦い顔だ。
「丸太山君、いい勝ち方でしたね。これで勝ち越しですね」
「うんまあ…」
 口調も苦い。
 やっぱここは突っ込みどころだろう。
 口を切ろうとしたそのタイミングで、親方の方が先に口を切ったので、私は戸惑って、ロをパクパクさせるはめとなったけど、親方は自分の考えにひたってて、アタシのあたふたには全然気づいてないようだった。
「丸太山には悪いが私には…あれが相撲とはどうしても思えんのだよ」
「つまりそういうこと」
 いつのまにかシュンテルが来ていた。
「親方には、俺らのは相撲じゃねーんだ。本格以外は外道なんだ。そんなふうに思われてて、頑張れる弟子がどこにいるよ」
「…」
「今のままじゃ、あのアフリカのチビも本格押しつけられちまうぜ。早くデビューしたがってるあの子には、ちょい酷だと思わねえか?」
「それは…」
 アタシは何とも答えられなかった。

 社屋に戻ったアタシは、今日の取材メモを整理しようと取りかかったものの、何から手をつけたら良いのか、見当もつかなかった。
 最初は黒人少年の奮戦記でいいかなと思ってたけど、何かいろいろポロポロでてくる。
 大人は何かと本格本格と言い、若者たちは肉体系とマシンバトルに熱狂する。
 どうしてこうなった?
 人気の問題だけなら、本格やめちゃえばいい。
 何で本格は続いてる?
 ロイヤルファミリーがお好きだから?
 総理大臣賞も賜杯もある。
 あ、国技だった、そーだった。
 何かもう、わかんないっ!
 とりあえず、映像ビューを3D再現する。
 立ち合いそうで立ち会わない。
 呼吸を合わせて一気に…
「いい立ち合いねえ」
 女言葉の男声。
 社屋隣りの小喫茶店『S』のマスター重岡光氏だ。
「氏じゃない。“嬢”よ」 
「マスター」
「まあマスターは許すか、やっ、嬢だから“マダム”…まあ…いいわ。どしてスモー流してんの?」
「担当になった」
「レイレイがあ? わかんの? 出来んのお?」
 何を言われても返すことばがない。
 でも、“いい立ち合い”。
 マスターはもしや。
 アタシはマスターにすがりついた。

 そうねえ。
 技とかの話だと全然語れないんだけど、『何で今、スモーは三つあるのか』くらいなら、たぶん話してあげられてよ?

 昔々日本には、相撲という神事がありました。
 昔の人はおなかいっぱい食べられる人生なんてほとんどなかったから、太った肉体は神様からの授かり物。
 (女性の美も、かつては太りじしだったのよ。先進国とか言ってるトコロでは絶滅した考えだけど。途上国ではまだまだふっくらしてる人が美人よね。あら、話逸れたわ)
 そんな福々しい神の愛(め)で子が力強かったら神の代理でしょ?
 土地神様と戦って、負けてさしあげると豊穣をもたらしていただける、そんな流れの神事さえあったの。
 そして強い人には権力者がおもねる、庇護したがる、いつしか相撲と権力はべったりの関係となっていったのね…
 だから今も、相撲は国技と呼ばれがち。
 正式に『国技』と定められた文書とかはないらしいんだけどね。
 そんな風に日本イコール相撲みたく言われてるワリに、なり手がどんどん減っていって、二十世紀の終わり頃、相撲は一度滅びかけたの。
 まあ、気持ちはわかるよねえ。
 きつい稽古に耐えさせられても、ほめてくれるのは通だけ。
 どうせやるなら野球やサッカー、格闘技ならボクシングとか。
 女の子ワーキャーしてくれるし。
 相撲絶滅の危機よ、まさに。
 そんな中で、やってもいいよって言ってくれたのが外国の人たちよ。
 オケツ出すのがいちばん恥ずかしかったらしいけど、強さはホンモノだし、名誉もすごいじゃない?
 だからバリバリ強くなる。
 徒弟制度みたいな上下関係も、歴史ゆえと思えば平気、みたいな。
 わざわざ国違えて頑張る人たちだから結果も出る、ある時期モロに横綱が、全部外国のかたがただったことすらあったのよ。
 でもそうなると日本人は口惜しい。
 勝ちたい、勝たせたい、体力差なくしたい。
 でも基礎訓練を頑張るのはやだと。
 じゃあどうすると。
 あっ、いけなあい!
 出前の途中だったわ!!

 真剣に聞いてたアタシを置き去りに、マスターは別の部署に駆けて行ったがすぐ、小銭をジャラジャラいわせながら戻ってきた。
「どこまで話したっけ」
「基礎訓練を頑張るのはやだ」
「そうそう。それで思いつかれたのがバイオ改造なわけよ。時代的にもプチ整形とか、ボディピアスとかファッションタトゥとか、若者が、カラダを変えることを怖がらなくなってたからなおさらね。より熱い格闘技としての相撲が、あっという間に認知されたの」
「でも…だったらあの、マシンバトル系は?」
「反動よ」
「反動?」
「誰でも屈強ボディに憧れる訳じゃないでしょ? そうじゃない系の相撲ファンの受け皿が必要になったの。もうちょい知的でかつ、生まれつきの運動能力に左右されない相撲。で、機械ならって発想が出てきたわけ」
「そういえば、アタシの小さい頃、ロボット相撲みたいなの、流行りませんでしたっけ? ほら、ちっちゃいロボットをリモコンで操って…」
「文科省ご推薦のアレね。科学振興とか言っちゃって。だめだめ。お上が思いついたものなんて、たいてい定着しない。それにやっぱ格闘技だもん。カラダ使わないとね」
 アタシはため息ついた。
「要するにどっちも、本気でカラダは鍛えたくないという、日本の若者気質反映して生まれたんだ」
「今は改造系にもバトル系にも外人さん増えてるから、日本の若者気質だけが軟弱化したとは一概には言えないけど、もとを作ったのは間違いなくこの国だわね」
 言い切った後で、はたと気づいて手を出した。
「授業料?」
「ンなのいらないけどお代は要る」
「今日頼んでない、あ、先月分?」
 ごめんごめんとお財布取り出したけど引っ込める。
「やっぱ社員チェックで」
 タッチライターに窓を開く。
「今どきあんただけよ、ツケなんて」
 窓にマスターがタッチすると、引き去り音がチリンと鳴った。
 覗き込んで愕然となる。
「四千五百円んー?」
「滞納料金つきました」
「がびーんっ」
「何それ。百年間たぶん誰ひとり使ってないわよその擬音」
 毎度あり~と行きかけるが、出口でちらと振り向いた。
「聞かないの? 『どうしてそんなに詳しいの?』って」
「聞かなァい。どうせマスターの前カレが、スモ一界詳しかったとかそんなでしょ」
「鋭いこと」
「記者ですから」
 マスターはカラカラ高く笑った。
「残念ながら前々カレよー」
 振り向いた時にはマスターは、廊下の方へ消えていた。
「そんなことはどうでもいいのだが…」
 つぶやく間にも映像ビューは、律儀に3D映像を再現し続けている。
 見合って立ち合って仕切り直して。
 そうなのだ。
 これはダラダラしてるのではなく、呼吸を、合図することなく合わせているのだ。
「いい立ち合いかぁぁ…」
 いつしかアタシはマジで相撲に見入っていた。

 わかると俄然面白くなってきた。
 今も十両どうしが、立ち合いのタイミングをはかっている。
 『その一瞬』は客席で見ている客たちにも、ちゃんと伝わってる。
 水を打ったような一瞬の後の、両者が四ツに組む瞬間、場内がワーッと上がる。
 戦う者と観る者が、一体となる瞬間。
 そこをわざと外す技もある。
 猫だまし。
 立ち合いで整った呼吸を一気に崩し、相手に挑みかかる技。
 立ち合いの妙を知った今、それを外す技だなんてもう…
 息をのんでいるアタシに、隣席の老人が嬉しげな視線を投げかける。
 わかるのだね。
 ええわかります。
 これが本物の相撲だという士幌山親方の言い分もよくわかるし、シュンテルに足りないものが足腰の粘りだということもとてもよくわかる。
 シュンテルに次会ったら必ず言おう。
 嫌われちゃうかもしれないけど、今ははっきり言いたい。
 そんなことを考えてたら、丸太山とメサが来るのに気づくのが遅れた。
「レイコ!」
 メサの片言発音を聞いて、やっと彼らに気づいた。
 われながら迂闊だ。
「おー」
 軽く手を上げてから、思いついてメサに、「さだりほメサ」
 メサはめちゃめちゃ嬉しい顔になった。
「サダルフ、ティエリ」
「ティエリ?」
「『美しいオネエサン』」
 訳してくれてからメサに、
「でもねーぞ」
「まるたー」
 睨んでからふと気づき、
「取組は? まだ場所中でしょ?」
「きのう勝って勝ち越しにはなったけど、マシンが修理不能になっちゃって…」
「てことは休場?」
「てこと」
 軽い答え方をした後、丸太山は急に真顔になった。
「レイコさん、俺廃業するかも…」
「え? だってあんた、マシン系ではかなり
なトコに来てンでしょ?」
「うちの爺ちゃん本格オンリーの人でさ。ガンダフ乗るくらいなら帰ってきて家業継げってギャアギャア」
「ガンダフ?」
「マシバ嫌いの人はだいていガンダフ呼ばわりだよ。せめてパシフィックリフとかエヴォンゲランくらいのこと言って欲しい…じゃなくてっ」
 言い種からも、切羽詰まっている感は伝わってくる。
「メサ。俺のBKがあくから使え。すぐデビューできるぞ」
「?」
「メ、ドンヌドンヌBKドン、メサ」
 訳したな。
 メサ喜ぶぞ。
 そう思って見ていたのだが、メサはなんと、首を横に振ったのだ。
「メサほんかくやる。まるたBKつづける。マシバの神、まるたすき。まるたつづけるよろこぶ」
「メサ…」
 戸惑う丸太山の横で、アタシもメサをただ見つめる。
 マシバの神…? 

それでも地球は回っている