ある人生とダイエット②


恋愛という名のダイエット


断食ダイエットのリバウンドで72kgまで巨大化した私でしたが、それでも仕事はこなさなければなりません。
自らの醜さに耐えながら、日々の仕事をこなしていました。
まだタレントだった西村知美さんの旦那さんにビール注がれた時など、何故あのときの体型でいなかったと、後で泣きました。
それでも仕事をこなし続けるうちに、72kgは68kgくらいまでには下がっていたと思います。
そんな時でした。
かれを見たのは。
深夜番組で見かけたかれは在阪の、当時20代後半の、お笑い芸人さんでした。


会いたい人には必ず会う
それが私の星


あこがれのライターの方にお目にかかったのがご縁で、ライターへの道を踏み出した私は、会いたい人には必ず会う、それが信条です。
でもこの体型。
会うのはつらい。
せめてプレゼントだけでも……

相方さんと分けられるようにあるものを二つ、事務所に贈りました。
それで終わりの筈でした。
なのに連絡が来たのです。
直接お礼がいいたいからと。
しかも好きな方からwww

困りました!
この体型です!
断って断って断ったけど聞き入れてくれませんし、私だってお目にかかりたい。
断りきれるものじゃありません。
結局東京でのライブ後、お茶することになってしまいました。
この巨体で!!


そして当日
待てど暮らせどかれは現れない


約束の場所はシティホテルのロビーでしたが、その町には久々に行ったので、何とホテル、名前が変わっていたのです。
そして約束の時間すぎること2時間。
待てど暮らせどかれは来ません。
こっそり見に来て巨体だったので去った?
ホテルの名前が違っていたから去った?
それとも…最初からからかわれていただけ?
私めちゃめちゃ恥ずかしいじゃんっ!!

逡巡しました。
もう帰る?
でもそのあと、かれ来たら?
ファンはスッポカされていい。
でもタレントはスッポカされては沽券に関わるよね……
私は朝まで待つことに決めました。
誰もがスマホを持つ時代の寸前。
連絡は取れません。
でも私は待ち続け、かれは、

午前三時にタクシーをとばして来たのです。

△△さん?
ごめんなー。
先輩らのみに行く言うてはったから抜けれんかった。
これからさらに三次会やねん。

そんな隙間を抜けてきてくれたのです。
すごいと思いました…


交際が始まりました。
私の巨体にひるまなかった彼に、私は安堵し、そこからなぜかぐんぐん痩せていきました。
関西在住のかれですから、なかなか会えません。
せっかく会えても人目を忍ぶ、都合、深夜に食事する。
会えた嬉しさに胸が詰まって、何も喉を通らない……
結局12kg痩せました。


今も付き合っていれば


私は願った40kg台を達成していたでしょう。
でも別れました。
かれは好きだったけど、かれの所属する会社が怖かった。
所属したら一生出られないと噂の……
遠巻きに見守る日々は私を再び巨大化させていきました。

今も思い出します。
差し向かいの焼肉テーブル。
ほとんど何も食べられない私に、

ほんま何も食わんのやな

だってアイドルと一緒だから

それはもうええわ

私のためだけにツッコミの技冴えわたらせてくれたかれでした。
今もその日々は宝です。


追記


かれは私が大きかろうと、細かろうと、全然気にしていませんでした。
そんな人もいるのだと、なんだか嬉しくなりました。
たとえそれが芸人特有のナルシズムだったとしてもです。
そしてこの出会いががかれにとり、単なるアバンチュールだったとしても、私にとっての価値は全く変わりません。
何も喉を通らない思い。
こんなこと、経験できるチャンス、人生にそうあるものじゃないですから。


それでも地球は回っている