とらてつ

 あんよがいたい
 ままはどこ
 ままはほかの毛玉といっしょ
 ほかのは
 いろんなにおいの手につれていかれた
 一緒に行きたくて
 あばれていたら
 じめんががこっておちた…
 あしが
 いたい

 においのする布まかれてて
 傷なめれない
 けがわはいつもなめておくのよ
 言ってくれたひとはだれ?
 のぐちがくる
 のぐちはやさしい
 おいしいものくれて
 あごのしたくすくすしてくれる
 声がする
 メスの人間
 知らない人
 でもいつも
 おとなの仲間の匂いするんだ
 年とってる
 すごく年とってる
 おさんぽすき
 おさんぽってなに?
 ここ出たい
 ここは他のがそばにいて
 においがいっぱい
 おれのにおいだけにしたい
 のぐち!

 行っちゃった

 その女の人がきたとき
 何かどきどきした
 やっぱり年上のメスの匂いする
 長くいっしょにいて…きょうだいみたい
 きっと人間は私のあとも生きる…

 人間は

 長生き‥

「けがが治ってももう売りものには…」
「それでも…よろしいのですか」
「それでは…回復ししだい…」

 何を言ってる人間
 のぐちじゃない方
 人間のメスがあたまさげた
 何言ってる?

 むずむずの布とれた
 洗われて
 久々にぜんぶが自分

 人間くる
 のぐちとメスも

 髪ながい
 胸大きい
 何でおれみる?
 食うの?

 知らないところに着いた
 あの匂いのおばあさんがいた

「ようこそ。
 私はクララ」

 やさしい目してくれる。

「おともだち?」
「おともだち。あの人間のメスもね」

 クララがそっと名前を教えてくれた。
 そしておれの名もかわると。
 まめすけはもういない。
 新しいおれ。
 なまえは…


               end

それでも地球は回っている