100の美しいものを記述する試み58兼・新新6



母の地元の話が出たついでに


両親が別れた時のことを話したい。
その夏の初め、私の里子先だった△△家に、突然母が送り返されてきた。
父がポンと置きに来たのだ。
小5の私は再び母と暮らせるのがうれしかったけど、理由もなく、彼女が家に戻されるわけもないことぐらいは理解していた。
友達に、さも深刻そうに、

うちの両親離婚するかもしれない

なんて言ってみたりして。
でも言うのと、それが現実になることは全く別のことで。

夏の終わりに父がきて、私はどっちと暮らすかという話になって。
私は母がめっちゃ好きで。
もちろん母と暮らしたかったけど。
ここに貰われてきた理由は、母の旧姓を継ぐためだ。
それはイヤだと私は思い、△△家の□□でいた。
私はこの町も好きだったけど、そこに縛られるのはいやだったのだ。

父と行く。
世話する。

意外なほど引き止められなかった。


名古屋に戻る車の中で、私は父に聞かされた。

△△の家が引き取れと言ってきた

と。
私が△△家で聞かされてたのは、

お父さんが引き取りたがってる

だった。

ああ。
大人ってこんなもんなんだな。

涙は出なかった。



今もってこの件では泣けてない。


それでも。


この経験も私を構成する一部だ。


だから愛しい。


それでも地球は回っている